心の臓のマリンブルー ( Ym × In )

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それから俺は、伊野尾ちゃんからずっと離れることにした。
全部を大ちゃんや薮ちゃんに任せて。

考えてみたら、きっと、俺を『涼介』だと認識した伊野尾ちゃんを止めて、ちゃんと『山田涼介』だよってわからせてあげなきゃいけなかったんだと思う。
きっとそこから、俺は、伊野尾ちゃんを殻に閉じ込めておくことを、無意識でも無自覚でも、心のどこかで決めてしまっていたから。


「涼介、」


今日は知念とふたりきりの撮影で。
伊野尾ちゃんと会わなくていい分気が楽だった。


「最近ひどい顔してるね。」

「そう？」

「うん。いのちゃんもだけどね。」

「恋人がいなくなったからでしょ。」

「じゃあ涼介はなんで？」


わかってるくせに、聞いてくるのがなんとも憎らしい。


「……自分にとって苦にしかならないことなんて、やめなよね。」


それでやめられるほど簡単な問題じゃないんだよ。
だって、俺は、伊野尾ちゃんを、殴ってはいないし暗いところに閉じ込めたりなんてもちろんしてないけど、本質的には、同じようなことを、しようとしたんだから。


「……涼介はさ、壊れちゃっても、いのちゃんって心の拠り所があるわけじゃん。」

「は？」

「だってそうでしょ？
涼介は、寂しかったらいのちゃんに近づくことができるし、すり寄ることができる。」


でも、と知念は続けた。


「伊野尾ちゃんはさ。
壊れちゃったら、誰かが手を差し伸べる以外に、助かる方法はないと思うんだ。」

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