伍*嫉妬 ページ5
.
甘味はもともと、当然、Aちゃんの分も買ってくるつもりだった。
でもあの時、炭治郎と仲睦まじく任務に出掛けようとする姿が、どうしようもなく悔しくて、どうしようもなく不安になった。
"恋仲は、俺なのに。"
炭治郎にも、Aちゃんにもそんな気は毛頭ないってことは、わかってた。
ただの、友達なんだと、わかってた。
それでもそんな、黒く淀んでしまった心は、次第に形を変え、
そんな心が、俺のなけなしの良心すら、すっかり飲み込んでしまったんだと思う。
今朝だって、珍しく彼女と同じくらい早く起きたのは、
次に早起きな炭治郎と、一緒に毎朝鍛錬してると考えたら、どうにも寝られなくなった昨夜があったから。
任務から帰ってきたAちゃんを抱きしめたとき、そんな黒い気持ちも、寂しさも、全て飛んでいった。
……と、思っていた。
気がついたとき、既に俺は口走っていた。
いや、口が勝手に喋った、って云う方が表現的には正しい。
「……俺に従って。出来るよね?」
彼女の良心を、純粋さを、逆手にとったような言葉だと、我ながら自分を蔑んだ。
そう、俺の頭は理解していた。
一瞬、思ってしまった。黒い俺だった。
でも確かにそれは、1厘の間違いもなく、俺自身の意思だったと思う。
"あぁ、これでAちゃんは生涯俺のものだ"
そんな気持ちは、さっき取り戻したばかりの、僅かばかりの良心にすぐに書き換えられ、
"もっと恋仲らしいことがしたい!"
"口実って云っちゃなんだけど、これならもっとAちゃんに触れられるかも!?"
と、それはもう全くいつも通りの考えに戻って。不安そうな音をさせる彼女を、そっと抱きしめた。
ごめんね、俺、びっくりさせちゃったね。
でも、全然怖い意味で云ったわけじゃないんだ。
もっと隣にいたくて、もっと触れていたくて。
こんなこといっちゃ、炭治郎には怒られるな。
でもAちゃんは俺の恋仲だからな。
倖せにするんだぞ、って、笑ってくれるだろうか。
たぶんこの時の俺は、無意識のうちに、
まさか、これがまだ始まりにすぎないだなんて、誰が思うっていうんだよ。
630人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
チュン逸 - 善逸症候群 (2020年3月17日 9時) (レス) id: 561c6ca45d (このIDを非表示/違反報告)
すぅ。(プロフ) - 陽雨さん» 続きが気になるなんて…ありがとうございます!更新頑張ります! (2019年12月14日 7時) (レス) id: ff4b7f13ec (このIDを非表示/違反報告)
陽雨 - え、、。やばっ!めっちゃ鳥肌たちました。続きが気になる…。更新楽しみにしてます。 (2019年12月13日 19時) (レス) id: 60ccd0f591 (このIDを非表示/違反報告)
すぅ。(プロフ) - Ecarlateさん» ん"ん"んめっちゃ嬉しいですありがとうございます!頑張ります!! (2019年12月10日 18時) (レス) id: ff4b7f13ec (このIDを非表示/違反報告)
Ecarlate - ン"ッ"好きッ!(唐突) 更新頑張ってくださいッ!! (2019年12月9日 19時) (レス) id: 08db41b2fa (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:すぅ。 | 作成日時:2019年11月5日 0時