拾弐*帰路 ページ12
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善逸くん側から鬼の気配が消えるのとほぼ同時に、私も渾身の一閃で鬼の頸を刎ねる。
祠からかなりの人骨が出た、というのだから、かなり強めに覚悟を決めてはいたけれど。
「強かったぁ………」
日の入り頃に始めた戦いにも関わらず、辺りは墨を撒き散らしたように真っ暗で。
恐らく、時計の針は優に漆の針を回っていることだと思う。
「善逸くんお疲れ様、帰ろっか」
振り返った先で、先刻まで鬼がいたであろう方向を向いて佇む彼がゆらりとこちらを見る。
その顔は、どこか寂しげで。
下がり眉で、困ったような笑顔を見せた。
「うん。Aちゃん大丈夫?怪我はなかった?」
「私は大丈夫、善逸くんこそ怪我しなかった?」
本当は、結構激しく動き回ったこともあってか、着地のときに一度しくじって左足首を痛めてはいたんだけど。
この程度の怪我は鬼殺隊では日常茶飯事だし、これは私の未熟さ故のこと。
それになりより、大好きな善逸くんに無駄な心配を掛けたくなかった。
お互いの安全を確認した上で、私が歩みを進めたのを合図に二人で帰路につく。
「善逸くん、今日気絶しないで倒してたよね!」
さすがだなぁ、と言葉を漏らせば、
"俺は強くなんかないけど、
ちょっとだけかっこいいところ見せたくて"
なんて照れながらも、心底嬉しそうに笑った。
私は、この笑顔がたまらなく好きなんだ。
刹那、彼は順調に進めていた歩みを止め、急に立ち止まる。
「え、なに、どうしたの?」
「Aちゃんさ、怪我してるでしょ。我慢してる音がする。」
確かに、少し前から、徐々に左足首の痛みが増している気がしていた。
さっきまではあまり気にも止めていなかったけど、改めてその怪我の存在を認識すると、立っているのが精一杯なほどの痛みが、そこを始点に全身へ響く。
「っあー、そんなに、気にならなかったんだけど」
あはは、なんて軽く笑い飛ばして見せるけど、頬には痛みから来る脂汗が伝っているのを感じた。
「全く…なんで、言ってくれないかな。」
ぐるりと横に回転した視界と、ふわりと宙に浮く感覚。
彼がそのまま歩き出して数秒後、横抱きにされていることに気が付く。
「お、下ろし 「五月蝿い。」
下ろして、と言葉を最後まで発することはなく、塞いだ彼の唇に吸い込まれていった。
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チュン逸 - 善逸症候群 (2020年3月17日 9時) (レス) id: 561c6ca45d (このIDを非表示/違反報告)
すぅ。(プロフ) - 陽雨さん» 続きが気になるなんて…ありがとうございます!更新頑張ります! (2019年12月14日 7時) (レス) id: ff4b7f13ec (このIDを非表示/違反報告)
陽雨 - え、、。やばっ!めっちゃ鳥肌たちました。続きが気になる…。更新楽しみにしてます。 (2019年12月13日 19時) (レス) id: 60ccd0f591 (このIDを非表示/違反報告)
すぅ。(プロフ) - Ecarlateさん» ん"ん"んめっちゃ嬉しいですありがとうございます!頑張ります!! (2019年12月10日 18時) (レス) id: ff4b7f13ec (このIDを非表示/違反報告)
Ecarlate - ン"ッ"好きッ!(唐突) 更新頑張ってくださいッ!! (2019年12月9日 19時) (レス) id: 08db41b2fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:すぅ。 | 作成日時:2019年11月5日 0時