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どうやら樹は樹で何か悩みがあるらしく、珍しくどんどん酒を煽る。
…悩みっていっても私からすれば羨ましい悩み。
自分だけ飲めば良いのに何で私と慎太郎くんのことまで煽るの?
最後の最後に残った、白色の甘ったるいお酒を一気に飲めば、
余韻だけでもぐらぐら目が回る。
「イェーイ、これで全色制覇〜」
赤、ピンク、黄色…のカラフルな小瓶を全部開けて机に並べる。
ラベルの可愛いきょろっとした目が、今や全部見事に憎い。
なんだかんだ樹も酔っ払ってた。目と頬がほんのりピンク色で、目がとろんとしてた。
そのままふらふら立ち上がって、最初の席に戻っていった。
ライターでも取りに行ったのかな。
酔っ払ってふわふわしてる状態で、
このまま座ってたら気持ちよくなって寝ちゃいそうだから。
喫煙所に行こうとして立ち上がろうとした。
…けど上手く立てなくて、右側にふらついた。
「…だいじょうぶ?」
甘い優しい香りが鼻を掠める。
すぐ近くに心臓の音とがあった。
慌てて目を上げれば、大きな瞳に吸い込まれる。
気付いたら慎太郎くんに寄りかかる形で、慎太郎くんに抱きとめられていた。
パーカー越しではあるけど、優しい男の子の力で左腕を掴まれている。
何が起きたか一瞬分からなくなったけど、とりあえずこれはまずい。
ふわふわ酔っ払った使いものにならない頭をどうにか動かす。
『…ごめん!』
そういって立ち上がろうとする。
けど、不意にそれも塞がれる。
「…」
『…慎太郎くん?』
左腕をつかんだ手はいつの間にかおなかの方にまわって、そのまま少しだっこされる。
何が起きたのか分かってないけど、ちょっと揺さぶれば、力が込められる。
…慎太郎くんの吐息が、熱い。
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作者名:甘さ控えめ太郎 | 作成日時:2023年12月12日 0時