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『…いたとしたらこんなサークルとっくに辞めてる』
「彼氏とサークルは別じゃね？」
『樹みたいに治安の悪い人がいるって知ったら心配されちゃう』
「…お前嫉妬されたいタイプ？」
意外だわ〜ってケラケラ笑われる。
樹に対しての精一杯の嫌味を言ったつもりだったのに、まったく届かない。
むしろ私が変な人みたいになって終わったんだけど。
「好きなタイプは？」
『…そんなに私とコイバナしたい？』
「まぁちょっとね〜」
『何、弱み握ろうとしてる？』
「お前じゃなくてね」
話が噛み合ってるようでちょっと噛み合ってない。
お酒の酔いのせいってことにして、普段なら喋らないようなことがすらすら出てくる。
「3つでいいから。はい、言って」
『…優しい、明るい、…カッコいい』
「は！お前さては面食いか！！」
『急に大きい声出さないでうるさい！！』
まじかよ〜って前髪をかき上げながらまたビールをごくごく。
こんなの言うんじゃなかった、なんで言ったの1分前の自分。
「…おっけー、優しい・明るい・カッコいいね。伝えとく」
『誰に！？』
「言わねーよ。言ったら意味ないべ」
『個人情報漏えいだ！』
さっきのお返しに樹の口におしぼり(もちろん新品)を詰めようとしてたら、
何やってんのって後ろから聞き覚えのある笑い声が聞こえた。
「Aちゃんって意外にSっ気あるんだね」
笑いながら、緑色のIQOSをヒラヒラさせた慎太郎くんがいた。
あ、そっか。樹誘いに来たのかってすぐ納得。
「ほんとこいつ危ない」
『違うじゃん！さっきからあげ押しつけてきた！しかも素手で』
「あーんしてあげたんじゃん」
『頼んでない！』
「え、お前あーんしてほしいとき頼むタイプ？やばー」
また私が変な人扱いされたところで、急に慎太郎くんと目が合った。
にこっとされてきゅんとした。樹なんか一瞬で消えた。
「あ、待って俺ライターあっちの席に忘れてきた」
「おいまじかよ〜」
「ちょっとA慎太郎の相手してくんね？」
『え、私？』
急に振られて樹を見てもニヤニヤしかしてなくて、何を企んでるんだ。
戸惑って何も言えなかったけど。
「…Aちゃん先いこ」
って何でもないように誘われれば、なんかこう、ね。
嬉しいんだけど緊張して嫌だ、みたいな。言葉に出来ない感情。
いてらーって樹がのんきに手を振ってる姿をみて、
あ、コイツ来ないのかよ、って確信。
樹め、覚えとけよ。
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作者名：甘さ控えめ太郎
| 作成日時：2023年12月12日 0時
