お狐さまのいうとおり。２【ars】【hsj】

すべきこと ページ33

ひとしきり見終わったところでスクリーンは消えた。


パチッ


知念さんが電気をつける。


侑李「どうだった？」


『彼は…咲という女性を愛していた』


侑李「そう、咲さんはどこか君に似ていると思わない？」


『私に…？彼女の方が綺麗ですし、ちっとも…』


侑李「見た目じゃない。中身さ」


『中身…？』


侑李「彼女も君も、芯の通った、真っ直ぐな性格だ」


『…』


侑李「彼は、君と彼女を重ねた。彼は君を愛するようになった」


だから満月のあの日…


彼は切なげな表情で私を見つめたんだ。


私は一筋の涙を流した。


侑李「君は、今何をすべきかわかる？」


『私は─────────』


彼の笑顔が脳裏に浮かぶ。


ごしごしと涙を拭う。


スっと息を吸い、知念さんに向かって言う。


『ここを守ります！』


侑李「いつもの表情に戻ったね(笑)」


『はいっ！(笑)』


侑李「あ、それで、僕はこれから別の任務があって遠方に向かわなきゃならないんだ」


『わかりました』


侑李「うん、なるべく早く戻るから何かあったら式神で知らせてね」


『はい』


私は彼を見て頷く。


『それでは失礼します！ありがとうございましたっ！』


バンッ！


そして私は講義室を勢いよく出て駆け出した。


侑李「ドアが壊れちゃうよ(笑)」


やっとわかった。


和也さんがなぜここに長年居続けたのか。


何を守っていたのか。


祭りの日に流した涙の意味。


全てを知った今、私がやることはひとつだ。

頼み→←約束

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す