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東海林と三澄がリーヴィスを追って着いた場所は、レトロな雰囲気なカフェだった。
カフェの窓際の二人席にいたのは木林だった。
「ねぇ、木林さん」
「ホントだ、なんで?」
木林がファイルから出した書類を提示し、リーヴィスはそれを見下ろした。何の書類であるかはわからない。
書類を見たリーヴィスはテーブルに肘をついて額に五本指を当てて目を細め、その書類をファイルに入れて、席を立った。
なんの注文もせず、木林に一礼してリーヴィスは足早にカフェを出た。
隠れるのが遅れ、リーヴィスの瞳に東海林と三澄の姿が映った。
リーヴィスの目が見開かれる。
「やっほー、偶然! 私達これからどっか飲みに行こうってなってたんだけど、一緒にどう?」
「そうそう、どう?」
三澄の機転を利かせて言葉に、東海林が同意する。
リーヴィスはふっと笑った。
UDIで見た人当たりの良い笑みでは無く、目元が柔らかくつい魅入ってしまうような笑みだった。二人は思わず見惚れた。
「…良い店を知ってるんだ。そこでも良いかな?」
「…あ、うん!」
「明日も仕事があるんだ、飲み過ぎちゃ駄目だよ?」
「大丈夫大丈夫!」
ーーーーーー
「あちゃー…寝おちたか」
東海林はバーカウンターに自分の腕を枕にして眠るリーヴィスの髪を撫でた。
「そりゃあね、東海林が愚痴ってる間A、バーボンのロックずっと飲みながら聞いてたし。東海林が愚痴ってから二時間経ってる」
「Aの相槌がい〜感じに話しやすいの〜」
カサ、という音が聞こえ、三澄が音がしたリーヴィスのメッセンジャーバッグの外ポケットから落ちたシワになっている折り畳まれた紙を拾う。
見ないまま戻そうとしたが、少し見えた文字の綴りにその紙を開いた。
「何、これ」
東海林が三澄の手元の紙を覗き込む。
「…【逃げられると思うな。死んで償え】…何これ脅迫文?」
「だね」
綺麗な字体に似つかわしくない物騒な文字。
綺麗な顔に似つかわしくない脅迫。
東海林は思わず隣の席で子供のように眠るリーヴィスの頬を撫でる。
「…ミコト、これ」
東海林はリーヴィスの右手に嵌められた銀色の指輪に目をやった。
そこにはイニシャルが彫られている。
「…恋人いたんだ」
「えぇ〜ショック…」
「結婚してるかもね」
「ショックオブショック…」
落ち込む東海林の背中を三澄が慰めるように撫でる。
「東海林、見なかったことにしよ、脅迫文。私達はまだ、深くまで踏み込んじゃ行けない気がする」
「…分かった」
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作者名:近江このは | 作成日時:2018年1月18日 22時