ストーキング・ロマンス【 yt × in 】 (ページ20)

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side：yuto

中「…なにしてんの？」

伊「ッ？！」

ハッとした顔で俺を見る先生と、いつも通り余裕こいた顔で笑う薮。

薮が、先生の手を両手で包んでいる。

薮「何って…ちょ、おい！」

先生が走って逃げた。

それをなぜか知らないけど、瞬間的に追いかけてしまった俺。

薮「手当だよ！手当！」

背後で叫ぶ薮の声が聞こえたが、無視。

手当って、なんだよ。

なんの手当だよ。

大して運動神経がよくなさそうな先生に追いつくのは簡単で、あっという間。

俺が掴んだその手は、さっきまであいつが握っていた手だ。

伊「ッ…」

中「…ハァ…ハァ…」

伊「……」

中「なに逃げてんの？」

伊「、別に…」

中「手当って何？」

掴んだ先生の手を見る。

白くて細くて女みたいな手。

が、赤くなっている。

……今朝の俺が、振り払ったから？

中「これ俺のせいだよね」

伊「…」

中「怒ってんだ」

伊「？！ちがっ…」

中「はいはいすいませんでした」

伊「違うって…」

中「俺、もう先生の顔見たくないんだよね」

違う。言いたいのはそれじゃない。

中「うざいんだよ、ビクビクビクビクして。生徒の目もまともに見れねえ奴が教師なんかしてんじゃねえよ」

ボサボサの髪の毛で表情が見えない先生が、今どんな顔でいるのかはわからない。

けど、さっきからまた、背筋に何かが駆け上がっている。

なんだよ、これ。

中「理科係とか、アホくさいしやめるわ」

伊「…」

中「薮先生に湿布でも貼ってもらえば？痛かったね～よしよしってキスでもしてもらえよ」

伊「…っ、」

すると、先生の顔が少しだけこちらを向いた。

珍しく、俺を睨んでいる。

中「なにその顔。否定すんだったらしてみろよ」

伊「…」

中「学校でイチャついてんじゃねえよほも野郎」

なんでこんなこと言ってんだ？俺。

中「マジで気持ち悪いから」

気持ち悪いなんて、俺が言えるのか？

あんな夢見といて。

先生は、何も言い返さないまま、また走って行ってしまった。

何やってんだろ、俺。