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父と娘 <弌> ページ9

水無月の前に氷の壁ができ、Aとの間に隔たりが出来た



「………」

「………」

Aも八絃も言葉を発さずにお互いを見ている

「…久し振りだな、A」

「………」

「やっと…会えた」

八絃はそう言って、動けないAを抱きしめた

優しく、陶器でも扱うかのように

「………」

Aは、抵抗できない



水無月は氷の壁に手を当てた

「(異能を使えば…Aさんのところに行ける)」

「させませんよ、水無月君」

異能を遣おうとした水無月に、アルベールは言った

「……」

「君は優秀な、“実験体„ だったのに…残念です」

「!」

アルベールのその言葉に、水無月は氷の壁から手を離した

「君では、八絃君を倒せない」



八絃はAから離れ、Aの右目を隠している前髪を上げた

「…俺と同じ、金色の眼」

「…………」

Aは何も云わずに八絃を見る

「俺は昔、お前に云ったな……行動は、行動だと」

八絃がそう言うと、冷気が集まり一つの槍を作った

「あの時、アンリはお前の代わりに無惨に死んだ…」

「………」

Aは表情一つ変えない

「あの時なら、ただの怪我で済んだかもしれねぇが……今、お前の先にあるのは “死„ だ」

八絃はそう言って、氷の槍を手に取り降り被った

「…フッ」

だが、それを気にも止めずAは笑みを浮かべた

「?…何が可笑しい?」

「私は此処に…殺されに来たんじゃない」

固く揺るがない信念が、Aにはあった

先刻の様子とは打って変わった態度

ここで初めて気付くのだ

先刻の声の震えと怯えようは、“演技„ だったと

ガシッ

「クッ…!」

八絃はAの首を鷲掴みにした

「随分と嘗めた真似を…!」

首を掴む八絃の手に力が入る

「クッ……フフッ…此処で、お前の演技は腐るほど見てきた…
それに、私を娘と云うのなら…父親である自分の、誰にも負けないと豪語している演技で、私に騙された気分はどうだ!」

締め付けられる首の痛みに耐えながらも、Aは言った

「!…そうか……残念だ」

八絃は氷の槍を降り下ろした

父と娘 <弐>→←震える声



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作者名:朱鷺の砂 x他1人 | 作成日時:2019年8月1日 22時

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