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カジノの為なら ページ14

「……? 妙だな、この硬貨
中に空洞……否、金属の構造物か……」

金庫に入っていた硬貨を手に取って、立原はそう独りごちた



『シグマさん…同僚として、貴方に助言しましょう
計画の途中で猟犬に見つかったら、すべてを捨てて逃げなさい』

ーーーーー貴方に勝ち目はありません

ドストエフスキーの言葉が蘇る

ーーーーー…捨てろだと? このカジノを?

シグマは液晶画面に映る立原を見ると、

「……済まない」

そう呟いて手に持った捜査端末の画面に触れた

ピッ



ドッ

立原の顔の傍で持っていた硬貨が爆発した

衝撃で立原は、後ろに倒れる

同時に金庫の蓋が閉まった

金庫に入れられていたのは、硬貨に偽装された高性能爆弾だった

内蔵された爆薬は少量だが強力

爆発時に破片が飛び散り、人体に重い損傷を与える

「(天人五衰の次なる『世界テロ』計画の中核を為す凶悪兵器
あれを見られた以上、生きて帰す訳にはーーーーー)」

ピピ

液晶画面から音が鳴り、シグマが画面を見ると

「何!?」

ほぼ無傷の立原が映っていた

金属を操る異能を持つ立原は、爆発時に飛び散った破片を宙で止め、直撃を防いだのだ

「(くそっ! 仕留め損ねた! どうする!?
……いや、口封じの手段ならまだある…最後の切り札が……
だが…あれを使えば、カジノにも甚大な被害が及ぶ…私の財産に等しい、カジノの客達にも)」

『貴方に勝ち目はありません』

『馬鹿としか云いようがないよ』

ドストエフスキーとAの言葉がシグマの脳裏に蘇る

ーーーーーその通りかもしれん 私は超人集団『天人五衰』にあって、もっとも戦闘力を持たぬ男…
  カジノの他に、何も持たぬ凡人

カジノを失いたくないが為に、客の性質やカジノの知識を睡眠時間を削ってまで暗記した

「…カジノの為なら、私は何だってする」





一年前

『何やってるの?』

資料を眺めているシグマにAはそう聞いた

時刻は翌日になろうとしている

『!A…何でも良いだろう』

『ふーん…カジノに来る客の資料ね』

Aはシグマの手にある資料を取り上げ、眺めた

『何を勝手に…』

『カジノの支配人も大変だね……全部暗記してるんでしょ?』

『…誰も暗記するとは云ってないだろう』

『私はもう覚えた』

『なっ…!? 真逆、瞬間記憶能力か?』

『まぁ…』

『ハァ…』

シグマは盛大な溜め息を溢した

『暗記なんて、覚えたことを忘れる前に思い出せば簡単に出来る』

『!…そうなのか?』

『だから、睡眠時間を削る理由が私には判らない』

天人五衰の目的→←秘密



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朱鷺の砂 - 夏休み期間なので少し更新速度が上がります (2019年7月22日 22時) (レス) id: 137c29396a (このIDを非表示/違反報告)
朱鷺の砂(プロフ) - 誤字脱字などありましたら教えて下さい また、作中で分からないこと、分かりにくかったことなどもありましたら教えて頂けると幸いです 他にも、作品やキャラクターについての質問等も受け付けています これからもよろしくお願いします! (2019年6月28日 18時) (レス) id: 4484823ae6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:朱鷺の砂 | 作成日時:2019年5月19日 7時

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