最悪な日 ページ10
「君は全く困った男だなぁ織田作
君がその気になれば、こいつらなんか一呼吸の間に殺せるだろうに」
軽い足取りで現れたのは太宰だった
「殺したのか？」
「うん…生け捕りにして情報を引き出そうとしても無駄だからね
何しろ奥歯に仕込んだ毒薬の味が大好きでたまらない連中なんだ」
織田に太宰はそう言った
「(奥歯に毒薬……死人に口なし、か…)」
Aは短機関銃に貫かれた二人の男に視線を落としていた
「！？」
その時、Aはあることに気付いた
「織田作之助
何があろうと絶対に人を殺さない信条を持つ奇妙なマフィア
その面倒な信条のせいで組織内で使い走りみたいに扱われるのだよ、織田作
あれだけの腕があるのにｰｰｰｰｰ」
「その手の苦情は自己嫌悪で何万回も承っている
それよりこの襲撃者だ」
「………」
強行突破は100%無理だと確信したAは仕方無く遠回りをすることにした
「この男達は何者だ？」
「“ミミック„」
「！」
だが、太宰のその言葉でAは動きを止めた
「……(ミミック…確か、戦争の……)」
Aが思い返していると、太宰は織田の持っていた金庫の鍵を開けた
中には、灰色の旧式拳銃が入っていた
その金庫が誰の物なのか、Aには検討が着かなかったが、二人の反応からして親しい人間の物だと判った
一方太宰は、織田に自身の推測を披露していた
Aにとってそれは興味のないものに等しかった
あくまで、推測は…
「そろそろ出てきたらどうだい？……小さな情報屋ちゃん」
「？」
「………(バレてた…)」
太宰の言葉は明らかにAに向けたものだった
「……全く、今日は最悪な日です」
流石に出ていかないと何をされるか判ったものではない為、Aはそう言い乍ら物陰から姿を現した
「A！？」
「太宰さん、貴方には透視能力か何かがあるんですか？」
驚きを露にする織田にはお構い無しに、Aは如何にも不機嫌そうにそう言った
「随分と不機嫌だね」
「当然です」
「何故こんな処に？」
織田がAにそう聞いた
「………知り合いがこの近くにいるから」
「一寸待って、私だけ敬語？」
「真逆、マフィアと敵組織の戦いが繰り広げられてるとは………」
太宰を軽くスルーしたAは呆れたようにそう言った
「そうか…それは悪かった」
織田はAにそう詫びた
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作者名：朱鷺の砂 | 作成日時：2019年3月29日 15時
