特務課のエージェント ページ35
「…明日、拠点に戻る」
唐突にAは桜庭に言った
「……知ってたよ」
「やっぱり電網潜り(ハッキング)してた」
桜庭の言葉にAは驚かず、呆れたようにそう言った
「何時、此処を出ていくんだ?」
「明日の朝」
「そうか」
桜庭はそう言うと部屋を出て言った
ー翌日ー
夜が明けた
Aはパソコンのデータを凡てメモリーに移し、本体を破壊した
以前、織田と孤児達と撮った写真はある本の間に挟み、本棚に戻した
拳銃嚢(ホルスター)に拳銃を納め、ナイフを隠し持つ
必要最低限の物だけを持って、Aは部屋を出た
「A、じゃあな」
ロビーに下りたAに桜庭がそう言った
「じゃあ……また何時か」
Aと桜庭は短く挨拶を交わした
Aは外に出る
今日は麗らかな陽光の差し込む暖かな日だ
ヨコハマの街をAは一人で歩いていた
すると、前から両手に荷物を抱え、むずかしい顔をした男が歩いてきた
その男には見覚えがあった
「……何、その荷物?」
Aが男に聞いた
「Aか…子供達への貢ぎものだ」
「抗争中なのに、相変わらずだね…作之助」
Aは織田の返答に半ば呆れてそう言った
「お前は……太宰の所にでも行くのか?」
織田がAに聞いた
「太宰さんの所?……もう行く必要ないよ」
そう言ったAは何時もより機嫌が良かった
「?」
「じゃあ、私はもう行くよ」
Aはそう言うと両手に抱えた荷物を落とさまいとバランスを取って歩く織田の先を歩いていった
行き先は特に決めずただ街を歩いた
「(……そろそろ連絡しておくか…)」
携帯電話を片手にAは近くの路地裏に入っていった
路地裏で電話を掛ける為、通話釦を押そうとすると、
ジャキ
背後から銃を構える音が聞こえた
「………」
肩越しに背後を見ると、そこには学者風の顔立ちに丸眼鏡の青年がAに銃を向けていた
「貴方は確かマフィアの情報員…?」
Aは銃を向けられているのにも関わらず青年の方を向いた
「僕は異能特務課の坂口安吾です」
「!?……異能特務課が私みたいな子供に何の用?」
驚きを顔に出さないよう努め乍ら、Aは安吾に言った
「ポートマフィアの首領に実力を認められる程の情報屋を特務課が把握していないとでも?」
銃口をAに向けたまま、安吾は言った
「………仕事の依頼、ではないよね……この状況的に」
そう言ったAの頬を汗が一筋伝う
「えぇ」
安吾はそう言って眼鏡の位置を直した
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作者名:朱鷺の砂 | 作成日時:2019年3月29日 15時