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『俺がお前達の願いを聞けないのは、夢があるからだ
いつかマフィアを辞めて何でも出来る身になった時、海の見える部屋で、机に座って……』

ーーーーーならばお前が書け

ーーーーーそれが唯一、その小説を完璧なままにしておく方法だ

織田の脳裏である男の言葉が呼び起こされる

『小説家になりたいんだ
銃を捨てて、紙とペンだけを持って……ある人が俺に「小説を書く事は、人間を書く事だ」と云った……人の命を奪う者に、人の人生を書く事は出来ない
だからもう、二度と人を殺さない』

『それが答えか?
それが我等の戦場に登ってこない理由なのか?』

ジイドが織田に言った

『そうだ』

織田がジイドに答えた

ジイドと織田が互いを見据える



「…………」

Aはミルクティーを飲み、何時のまにかティーカップの横に置かれていた茶菓子を口に運んだ

Aは集中力を途切れさせない



『その気がないならば仕方がない
貴君は俺を殺さない…乃公(おれ)の望みを理解していないからだ
そして乃公も貴君を殺さない…貴君だけが我等を浄火の戦場へ導くものだからだ』

ジイドの背後に兵員輸送トラックが止まった

ジイドと部下達はトラックに乗り込んで行く

立ち去り際、ジイドは織田の方を振り向いた

『乃公を理解させてやる 此処にーーーーー』

そう言ってジイドは自分のこめかみを強く指差した

『何があるかを見せてやる
そうすれば判るだろう、本当のことが……貴君と乃公のどちらかが死ぬしかない(・・・・・・・・・・・)と云うことが』

ジイドはそう言うとトラックに乗って消えた

『楽しみにしていろ』

そう一瞥をして……



「……フゥー」

Aは大きく息を吐いた

ミルクテイーは既に冷めてしまっている

Aは茶菓子に手を伸ばし、口に運んだ

日が暮れようとしている

ボフッ

Aは椅子から立ち上がり、寝台に倒れ込んだ

「ハァ…………疲れた」

Aはそう呟くと、目を閉じた



「ーーーい…おいA、起きろ!」

「!」

Aが声に気付いて目を開いた

「珍しいな、お前がこんな時間に寝てるなんて」

そう言ったのは桜庭だった

窓の外は既に日が暮れていた

「……寝過ぎた」

「全くだ……」

呆れたように桜庭がAに言った

特務課のエージェント→←織田作之助とアンドレ・ジイド



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作者名:朱鷺の砂 | 作成日時:2019年3月29日 15時

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