夢 ページ34
『俺がお前達の願いを聞けないのは、夢があるからだ
いつかマフィアを辞めて何でも出来る身になった時、海の見える部屋で、机に座って……』
ーーーーーならばお前が書け
ーーーーーそれが唯一、その小説を完璧なままにしておく方法だ
織田の脳裏である男の言葉が呼び起こされる
『小説家になりたいんだ
銃を捨てて、紙とペンだけを持って……ある人が俺に「小説を書く事は、人間を書く事だ」と云った……人の命を奪う者に、人の人生を書く事は出来ない
だからもう、二度と人を殺さない』
『それが答えか?
それが我等の戦場に登ってこない理由なのか?』
ジイドが織田に言った
『そうだ』
織田がジイドに答えた
ジイドと織田が互いを見据える
「…………」
Aはミルクティーを飲み、何時のまにかティーカップの横に置かれていた茶菓子を口に運んだ
Aは集中力を途切れさせない
『その気がないならば仕方がない
貴君は俺を殺さない…乃公(おれ)の望みを理解していないからだ
そして乃公も貴君を殺さない…貴君だけが我等を浄火の戦場へ導くものだからだ』
ジイドの背後に兵員輸送トラックが止まった
ジイドと部下達はトラックに乗り込んで行く
立ち去り際、ジイドは織田の方を振り向いた
『乃公を理解させてやる 此処にーーーーー』
そう言ってジイドは自分のこめかみを強く指差した
『何があるかを見せてやる
そうすれば判るだろう、本当のことが……貴君と乃公のどちらかが死ぬしかない(・・・・・・・・・・・)と云うことが』
ジイドはそう言うとトラックに乗って消えた
『楽しみにしていろ』
そう一瞥をして……
「……フゥー」
Aは大きく息を吐いた
ミルクテイーは既に冷めてしまっている
Aは茶菓子に手を伸ばし、口に運んだ
日が暮れようとしている
ボフッ
Aは椅子から立ち上がり、寝台に倒れ込んだ
「ハァ…………疲れた」
Aはそう呟くと、目を閉じた
「ーーーい…おいA、起きろ!」
「!」
Aが声に気付いて目を開いた
「珍しいな、お前がこんな時間に寝てるなんて」
そう言ったのは桜庭だった
窓の外は既に日が暮れていた
「……寝過ぎた」
「全くだ……」
呆れたように桜庭がAに言った
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作者名:朱鷺の砂 | 作成日時:2019年3月29日 15時