最上階の執務室 ページ4
ポートマフィア本部ビルに戻ってきた太宰と織田は、首領である鴎外の執務室がある最上階に向かっていた
ヨコハマを街を見下ろせるような硝子張りの昇降機
最上階に着くまで、二人は一言も発さなかった
昇降機の扉が開く
その先の廊下に敷かれた毛足の長いカーペット
RPGでも破壊出来ないような頑丈な壁
執務室のフレンチ・ドアの前にいる黒い背広姿の見張りは、二人を見るなりドアの前から退いた
二人は執務室の扉を開け、中に入る
広い執務室の中央、大きな執務机の前で立ち止まる
その向かいには、鴎外が腰掛けている
「首領、これが受け取った情報です」
太宰はそう言って封筒を差し出した
「御苦労だったね」
鴎外は受け取った封筒の中身を確認しなかった
「首領、何故、情報屋を使ったりしたんですか？」
「……この男と組織の情報が驚くほど無かったのは事実だよ…
だが、我々の情報網を駆使すれば、調べ上げることは実に容易だった……」
太宰の問いに、鴎外はそう言った
「容易だったのにも関わらず情報屋を頼った…ということですか？」
鴎外の言葉に織田がそう言った
「そうだねぇ……実は、今回のこの件、云わば単なる腕試し(･･･)なのだよ」
「腕試し？」
「？」
鴎外の言葉に太宰と織田は内心首をかしげていた
「というのも、八絃君のことが知りたくてね」
「「！」」
その言葉で、執務室の温度が一気に下がったように感じられた
「八絃さん…ですか」
「……龍頭抗争で命を落としたと聞きましたが…？」
「否、恐らく彼はまだ生きているよ」
織田の言葉に、鴎外はそう言った
「幹部の座にいた八絃君が、龍頭抗争で命を落とすとは考えにくいのだよ
抑、我々は彼の何を知っている？」
「………」
その言葉に太宰も黙るしか無かった
「彼のことを調べる為に、何れだけ探りを入れても、尾行をつけても、何一つ得られたものはない…」
沈黙
「………首領」
それを破ったのは織田だった
「何だい？」
「今更ですが、私のような最下級構成員が、この様な話を聞いていても宜しいのですか？」
織田が鴎外に聞いた
「…構わんよ……君を此処に呼んだのは私なのだから」
「……」
そう言った鴎外の口元には、怪しげな笑みが浮かんでいる
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作者名：朱鷺の砂 | 作成日時：2019年3月29日 15時
