縄張りを荒らす亡霊 ＜弐＞ ページ26
「君の “命„ と “情報„ だよ……亡霊さん」
「！？」
Aの言葉に男は驚きを露にした
「あぁ因みに、ポートマフィアなら既にいるよ」
「何？」
ﾊﾞｱｧﾝ
一発の銃声が響いた
「ｸﾞｱｱｯ」
男の脇腹を銃弾が貫き、血が飛び散った
ﾄﾞｻｯ
「……何時から気付いていたんだい？」
Aの背後から、包帯を巻いた男…太宰が歩いてきた
「貴方達が様子を見る為、物陰に隠れた辺りから」
Aは太宰にそう返した
「ふーん……それにしても君、意外と容赦無いね」
そう言った太宰の瞳には、『灰色の幽霊(グラオガイスト)』を握ったAが映っている
男の脇腹を撃ったのは、Aだったのだ
「何故…殺さない…」
男が傷を押さえ乍らAに聞いた
「だってまだ、情報を貰ってない」
淡々とAは答えた
「ｸｯ……」
「奥歯に仕込んだ毒薬を飲むつもりかい？」
男の次の行動を予言するように太宰は言った
「……」
「別に好きにしていいけど……
そんなに死を望むのなら、残りの銃弾全部、その体に撃ってあげようか？」
「その傷のままでは辛いだろう？」
人を人と思っていない様な二人の目に、感情なんてものは無い
男はそれに恐怖を覚えた
二人に対する恐怖と待ち望んだ死への恐怖
「君達の目的は？」
「我々は敗残兵……戦争で死ぬこと…それだけが、望みだ」
「じゃあ、ミミックを束ねる長は？」
「司令官の名は……アンドレ・ジイド…我々の英雄だ」
太宰の質問に男は答える
Aは男に銃を向けたままだ
「その司令官の異能力は？」
だが、それが何時までも続くわけがなかった
「それは……」
ﾊﾟｼｭｯ
「！？」
「「！」」
男が答えるのを遮るように、一発の弾丸が男の頭を貫いた
銃声は聞こえない
狙撃だった
「……口封じか」
「死人に口なし……もう用はありませんね」
Aはそう言うと銃を下ろした
太宰は部下に男の死体の処理を命じていた
ミミックによる、これと同様の事件は、同時にあと五件……計六件起きていた
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作者名：朱鷺の砂 | 作成日時：2019年3月29日 15時
