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焦りと動揺 ページ18

『ですが二つ、訂正させてください』

「………?」

『一つ、僕は貴女を信用しているからヨコハマに行かせました』

「!?」

ドストエフスキーの言葉にAは僅かに目を見開いた

『云ったでしょう?……期待していますと』

「……もう一つは?」

『二つ、ゴーゴリ君は貴女の監視などしていません
あくまで彼は「天人五衰」…僕の部下に手出しはするなと伝えてあります』

「……」

Aは何も云わず、唯、空を見上げた

綺麗な青空だった

『それより、僕も貴女に連絡しようと思っていた所なんです………
A、数日後ヨコハマ租界の密輸港から密輸船が出港します……それに乗って露西亜に戻って来てください』

「………判った」

Aはそう言うと電話を切った





夜、Aは桜庭に連れられ、或る建物の地下に来ていた

その地下には、広い部屋が一つあった

Aと桜庭は部屋の扉を開けた

部屋の中には、様々な種類の銃火器と的があった

「好きな銃を選べ……使い方を教えてやる」

部屋に入るなり桜庭はそう言った

「……此処は?」

「俺が昔使ってた射撃場」

「本当、何者?」

「元情報屋の管理人だよ」

「………」

会話をしながら、Aは拳銃を手に取った

「安全装置を外して照準を定め撃つ…」

桜庭はそう言い乍ら拳銃を取り出し、的に向かって撃った

バァン

銃弾は的の真ん中を貫いた

「…こんなもんだな」

「!………」

Aは驚きを露にしていた

「A、やってみろ」

「……」

Aは拳銃を構えると

バァン

的に向かって撃った

「……へぇ…!」

銃弾は的には当たったものの真ん中ではない

「……」

「なぁ、A……何で急に拳銃なんだ?」

桜庭がAに聞いた

「それは……」

「異能力を使いたくないから、か?」

「……」

その言葉にAは何も言わず、拳銃を置いた

「あれだけ強い異能力を持っていながら、使いたくないって気持ちが俺には理解出来ないな」

「!……」

二人の間だけ時が止まったようになる

地下室と壁の防音加工故の静けさ

「だが、それだけじゃあねぇよな?
…あるんだろ?…お前がそうしたい理由が他に」

そう桜庭は言い切った(・・・・・)

「!?」

Aは目を見開いた

だが顔を伏せていて桜庭には表情が窺えない

「例えば……誰かの為、とか?」

「!!?」

何処か含んだような笑みで言った桜庭は、Aが焦りと動揺を僅かな時間ではあるが表情に出したのを見逃さなかった

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作者名:朱鷺の砂 | 作成日時:2019年3月29日 15時

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