本当の理由 ページ17
太宰が織田に話している間、Aは携帯電話を開いた
「………」
Aが二人を見ると、
「根本的なところを訊くが……そもそもミミックのような異能犯罪組織は、政府機関が取り締まるものではないのか?」
話は政府機関『異能特務課』の話に移っていた
Aは携帯電話を手に持ったまま、立ち上がった
二人は話に夢中になっているのか、Aが立ち上がったことに気付いていない
そのまま、Aは洋食店を出た
Aのいた席に、橙色の上向きに咲いた百合が一輪、置かれていた
「………頭目」
携帯電話を耳に当て、Aはそう言った
『貴女から電話を掛けてくるなんて、珍しいですね』
「……私をヨコハマに行かせた理由は何?」
『………』
「貴方は『白紙の文学書』について調べろと云った……でもそれは、適当についた嘘…本当の理由は何?」
『フッ……』
聞こえてきたのは、どこか無邪気に聞こえる笑み
『流石ですね、A』
電話でなければ拍手が聞こえて来ていただろう
『ですが、態々電話を掛けてまで、それを話すということは
その理由について少しでも貴女なりの予想があるのでは?』
「…………私が、本当に貴方の部下か確かめる為」
『何故、そう思うのです?』
「私が間蝶(スパイ)である可能性はある……彼奴が裏で私を操っている可能性が」
『………』
「仮に私が間蝶(スパイ)だったら、確実に通信機器を使った報告は避ける……報告の為には、直接彼奴に伝えるしか方法が無い
ポートマフィアへの接触は単純に、龍頭抗争で死んだらしい八絃一也の生死と居場所をマフィアが隠蔽しているか否かを確かめるため」
『……』
「もし隠蔽をしていたら、私は接触を装って彼奴に報告をしに行く
それを貴方は何らかの手を使って…恐らく、マフィアの構成員の中に紛れているゴーゴリを通して、その事実を確認する
この作戦ならば、貴方達に不利益(デメリット)は無い」
『フフフッ…その通りです』
ドストエフスキーはそう笑って肯定した
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作者名:朱鷺の砂 | 作成日時:2019年3月29日 15時