【文豪ストレイドッグス】地下組織の変わり者＜五＞ (ページ12)

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灰色の幽霊ページ12

「…………残念だよ…また死ねなかった」

太宰の側頭部、右耳の少し上の皮膚が抉れ、出血していた

「悪いね、吃驚させて」

太宰が織田とAの視線に気付き、笑った

「迫真の演技だったろう？あいつが外すことは判っていたのさ…最初からね」

笑って説明する太宰を織田はじっと見ていた

Aは二人に背を向け、歩き出した

「何処へ行くんだい？」

太宰の言葉にAは足を止めた

「帰るだけですよ」

「……協力はするんだね？」

「元より拒否権は無いでしょう？」

太宰の言葉にAはそう言った

「…ミミックの情報は、判り次第連絡してくれ」

「……判りました」

Aはそう言うと太宰と織田の横を通り過ぎた

やっと、煉瓦造りの建築物(ビルディング)へとAは戻ってこれた

「遅い」

ロビーにいた桜庭がAにそう言った

「マフィアと敵組織の銃撃戦にあってきた」

「！？……大変だったな…怪我は無いか？」

「無い」

「そうか……」

桜庭はそう言うと、カウンターの方へと向かった

「あぁ、そうだ」

思い出したように桜庭はAの方に振り返ると

「今朝の射撃の話……今夜から出来るがどうする？」

そう言った

「やる」

「即答かよ……」

Aの返答に桜庭は少し呆れたような微笑を浮かべた

自室に戻り、Aは外套のポケットから拳銃(･･)を取り出した

それは、マフィアが使っているような最新鋭のものではなかった

灰色の銃身と細い発射口…… “灰色の幽霊(グラオガイスト)„ と呼称された欧州の旧式拳銃

ミミックにとって、エンブレムでもあるあの拳銃だった

先刻、太宰達が気を取られている隙に銃を抜き取って来たのだ

自室の机で、Aはそれを眺めていた

それから雨が降った

窓の硝子に水滴が付く

Aは、パソコンの液晶画面(ディスプレイ)と睨み合っていた

画面に表示されているのは、全て英語の資料

「………」

画面の文字を目で追う

雨が硝子に当たる音とタイピングの音が部屋に響く