第7章・透明アンサー 7 ページ20
「………Aさん?」
止まったような探偵社の時が、ナオミの声で動き出す。
ナオミは、凄い勢いで月瑞さんに抱き着いた。
「………ナオミちゃん?」
離れて、と言おうとしたのだろうが、ナオミは離れそうもない。
「良かったですわ………本当に………
敦君と一緒でなくて…後で行く、何て………」
何処か切羽詰まったような、寂しそうな、何とも形容しがたい泣きそうな声で
話し続けるナオミに、月瑞さんは口を閉ざす。
「本当に………心配したんですよ…!?」
心配、か………。
本当に…僕だって。
整った眉を下げて、何処か哀しむような物憂げな、何とも言えず悲哀と
寂寥が込められた、決して此処ではない何処かを見ているような月瑞さんの目。
何処を…見ているんだろう?
その、対岸を見てきたような目は、僕らとは交わらない。
月瑞さんにはきっと、違う何かが見えてるんだ。
僕らが見えもしない、考えもしない何かを知っている。
僕らが手を伸ばしても、決して届かない何かを。
「___________ごめんね」
素朴な言葉が、そっと鼓膜を震わせる。
ナオミは抱き着いたまま、くすんくすんと鼻を鳴らし始める。
如何やら、気が抜けて泣いているらしかった。
44人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
月華 - 太宰治さん» 有難うございます!更新させて戴きます…こんな作品に面白いって云って下さって、本当に有難う御座います!ゆっくり楽しんで行って下さいね(笑) (2017年5月30日 18時) (レス) id: e17908aa70 (このIDを非表示/違反報告)
太宰治 - とってもおもしろいです!続が速くみたいです! (2017年5月25日 13時) (レス) id: fb488f32ff (このIDを非表示/違反報告)
夜葉 - いえ、こちらこそ変に細かい所を、指摘してすみません。更新頑張ってください!楽しみにしてます。 (2017年4月16日 13時) (レス) id: 7e977bc42c (このIDを非表示/違反報告)
月華 - すみません!本当だ…直させて戴きますね。ご指摘くださって、有難うございます!面白いなんて、有難うございます! (2017年4月15日 18時) (レス) id: e17908aa70 (このIDを非表示/違反報告)
夜葉 - 羅生門虎9で彼岸花じゃなくて、彼岸桜です。おせっかい、ごめんなさい。この作品、ものすごい面白いです。 (2017年4月13日 20時) (レス) id: 7e977bc42c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:月霞銀樹 | 作成日時:2017年4月4日 15時