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古いジャズが微かに流れていた
地下にある店内に窓はない
柔らかい空気、絞られた照明

からりと心地よい音がして、グラスの中の氷がまわった
蒸留酒の入ったグラスには、白いアリッサムの花が添えられている
其処は、かつて織田作之助という男が何時も座っていた席
置かれた酒は、彼が何時も飲んでいた銘柄の蒸留酒

その隣の席に、太宰が座る
太宰は、自らのグラスを手に取り、かつて隣に座っていた相手に話しかける

「今日は何に乾杯する?」

『安吾が来るまで待たないのか?』

ーーーー友の声が聞こえた気がした

「………」

黙したまま、太宰は遠い日の会話を思い出していた





数年前

同じ場所、同じ席で太宰は織田に笑いかけた

「じゃあ、世間話でもしよう……最近面白い話を聞いたんだ
リンゴ自´殺って知ってるかい?」

「……リンゴ自´殺?」

太宰の言葉に織田は目を瞬かせる

「そう、リンゴ自´殺」

太宰が静かに頷いた

「ああ……シンデレラか」

「シンデレラ……」

予想外の単語に太宰は織田の言葉を繰り返す

「…んー…その回答は流石の私も予測できなかったなぁ……織田作と話していると本当に飽きないよ
釈明しておくと、毒リンゴを食べたのは白雪姫だし、彼女は自´殺じゃない」

「そうか……間違えた」

「否、待てよ……ひょっとしたら白雪姫は自´殺かもしれない……
彼女は毒リンゴと知っていてかじったのかも」

太宰は口元に親指を当て、そう言った

「何故だ?」

「絶望だよ
母親に毒を差し出された絶望
ーーーーー否、もっと得体の知れない、この世界そのものが内包する絶望ーーーーー……」

「………」

「だとしたら、面白いね………
最近、面白い異能者に会ったんだよ」

太宰はうつむき、楽しげに唇を歪める

「そいつは人にリンゴ自´殺をさせる」

異質な笑みで太宰は言う

「そのうちヨコハマでも流行るかもね」

「自´殺がか?」

「ああ…素敵じゃないか」

太宰の笑みは、どこか幼く、無邪気な子供じみていた

そんな太宰を見つめ、諦めたように首を振った織田は

「お前は面白いな、思考がくるくる回る」

そう言った

「織田作ほどじゃない」

太宰は笑みまじりにそう返す

「遅いな、安吾」

織田は、軽い口調で、何時もの日常を繰り返すようにそう言った


ーーーーーそれは、もう戻らない、かつての日常だった

昔と今→←百合



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雪華 - ワンピース×たくっちのまぃの恋愛短編集をリクエスト来ましたよ!頑張って作って下さいね! (2018年10月8日 9時) (レス) id: 1286db9797 (このIDを非表示/違反報告)
朱鷺の砂 - こんな作品を読んでいただき、ありがとうございます! (2018年10月7日 22時) (レス) id: c2940fbcc7 (このIDを非表示/違反報告)
ユウナ - 初コメです!小説面白かったです!更新頑張って下さい! (2018年10月7日 21時) (レス) id: f267fe3bd0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:朱鷺の砂 | 作成日時:2018年10月7日 18時

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