幾分か素敵だと ページ48
陽光とともに、澁澤の霧によって起きた異常が少しずつ戻されていく
武装探偵社の入ったビルでは、江戸川乱歩が悠々と歩いていた
「異能を持たない僕がここに戻ったってことは、うまくいったってことだな」
社内は荒らされており、無事なのは金庫の中身ぐらいだった
「敦もなかなかやるようになったじゃないか
え？…太宰」
乱歩の食べていた駄菓子が音を立てて折れた
ｰｰｰｰｰこれですべて、終わったんだ
鏡花とともに瓦礫の山となった骸砦を眺め乍、敦は思う
二人の後ろから近付いてくる足音が聞こえた
鏡花と二人、同時に振り返ると、砂色の長外套を纏った太宰がいた
「敦君……今回、私はねｰｰｰｰｰ」
「太宰さんはこの街を守ろうとしたんですよね？」
太宰が何かを言う前に、敦は顔を和らげる
太宰は、驚いたように、顔を複雑に歪めた
「私がそんなことをするいい人間に見える？」
「見えますけど……」
敦が頷いて答えた
途端、太宰が僅かに瞠目した
やがて、呆れたように、けれど優しく苦笑する
「まぁいい
……彼が最期に、退屈と孤独を埋められたらならいいが」
太宰が敦達に背を向け、水平線の彼方に視線を向け、呟いた
「貴方はこれで本当に良かったの？」
心配そうな鏡花の問いに、敦はそっと目を伏せる
「……一度は殺した記憶を忘れたみたいに、もう一度あの過去に蓋をすることは、できるんじゃないかと思う
でも、これでいいんだ
少なくとも今は皆と街を守れたことを誇りに思うし、そうやって鏡花ちゃんや皆の隣で生きていく方が……幾分か素敵だと思うから」
そう言った敦の目には、確固たる意志の光が宿っている
「………」
心配そうだった鏡花の顔が、安心したように綻んでいく
肩越しに敦達の様子をうかがっていた太宰が、そっと微笑んだ
何かを懐かしむように、それでいて敦らしさを喜ぶように
二人の笑みがうつったように、敦の顔にも笑みが浮かぶ
そこへ、聞き慣れた声が聞こえて来た
「くぉらあああああ！
生きとったか、この唐変木！」
振り向くと、武装探偵社の面々が揃って歩いてきた
谷崎、国木田、賢治、与謝野、福沢
「みんなも無事だったんだ」
敦がほっと呟く
「当然さ
私達は『武装』探偵社だよ？」
太宰は、敦にそう返した
「だろ？」
太宰の余裕に満ちた笑みで問われ、敦は、
「はい！」
満面の笑みを浮かべて頷いた
太宰達の足下で、青いリボンが風で静かになびいている
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雪華 - ワンピース×たくっちのまぃの恋愛短編集をリクエスト来ましたよ！頑張って作って下さいね! (2018年10月8日 9時) (
レス) id: 1286db9797 (このIDを非表示/違反報告)
朱鷺の砂 - こんな作品を読んでいただき、ありがとうございます！ (2018年10月7日 22時) (レス) id: c2940fbcc7 (このIDを非表示/違反報告)
ユウナ - 初コメです！小説面白かったです！更新頑張って下さい！ (2018年10月7日 21時) (レス) id: f267fe3bd0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：朱鷺の砂 | 作成日時：2018年10月7日 18時
