検索窓
今日:5 hit、昨日:13 hit、合計:34,889 hit

朝日 ページ47

「……今、すべてを理解した
君が此処にいることも、君が私の前に現れた理由も、そして彼(・)の言葉の真意も」

気魄が圧力となって霧を渦巻かせる
敦の瞳は澁澤だけを見据えている
罅が入るように、澁澤を侵蝕する影があった

「君が……君が、私を救済する天使かーーーーー……」

澁澤の体が崩れ、すべてが光と影に溶ける
敦の手には、髑髏だけが残っている
虎の爪痕が残った髑髏

敦は力を緩めず、髑髏を握りつぶした
骨が砕ける
髑髏が壊れる
一片も許さず、粉砕される
髑髏は、ついに光の粒子となった

光は敦を中心に広がり、澁澤のつくった霧を呑み込んでいく
毒々しい赤い霧が消え、夜明け前のヨコハマに蒼い光が広がっていく
光がすべての赤い霧を消し終わった頃には、闇が薄くなっていた
ーーーーー長かった夜が終わり、朝日が昇ろうとしていた

手の中から生まれた蒼い光を見届け、敦はそっと地上に降り立つ
敦は、ほっと息を着き、心配そうな鏡花に微笑みかけた
強張っていた鏡花の表情が、ゆっくりと和らいでいく
芥川は、何も言わず去っていった





「ーーーーー特異点、及び霧の消失を確認」

異能特務課の通信室で震える声が響く
一瞬の沈黙の後、全員が歓声をあげた
安吾もまた、安堵の吐息を漏らした
体から力が抜け、椅子に座り込んだ

『時計塔の従騎士が作戦の中止を連絡してきました』

オペレーターがそう告げた





同日、同時刻

「残念……国の焼ける匂いは紅茶に合いますのに」

重厚で伝統的な家具の置かれた部屋のソファーに腰掛けたアガサがそう呟いた

涼やかな眼差しが、そっと琥珀色の水面に落とされた





霧の払われたヨコハマを、ゆっくりと朝日が照らしていく
廃墟のようになっていたビル街に、大量の車が停まった道路に、静まり返っていたファーストフード店に、人の姿が戻っている

そして骸砦の跡地では、何かを探すように芥川がさまよっていた

「こんなとこで何してやがる?」

乱暴な口ぶりに芥川が目を向けると、そこには座り込む中原の姿がある
トレードマークの帽子が見当たらない
おそらく、近くに落ちているのだろう

「太宰のポンツクなら無事だぜ」

中原が、芥川の心を見透かしたように告げた

「………」

芥川がにわかに姿勢を正し、一揖した
すぐさま去ろうとする芥川

「おい、肩貸せや」

中原は、芥川にニヤリと笑って告げた

幾分か素敵だと→←敦・鏡花・芥川



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (23 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
38人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

雪華 - ワンピース×たくっちのまぃの恋愛短編集をリクエスト来ましたよ!頑張って作って下さいね! (2018年10月8日 9時) (レス) id: 1286db9797 (このIDを非表示/違反報告)
朱鷺の砂 - こんな作品を読んでいただき、ありがとうございます! (2018年10月7日 22時) (レス) id: c2940fbcc7 (このIDを非表示/違反報告)
ユウナ - 初コメです!小説面白かったです!更新頑張って下さい! (2018年10月7日 21時) (レス) id: f267fe3bd0 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:朱鷺の砂 | 作成日時:2018年10月7日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。