【文豪ストレイドッグス】地下組織の変わり者 ＜零zero＞

白虎 ページ44

石造りの牢獄にも似た部屋で、敦はぼんやりとしていた
ぽつりと澁澤の言葉を繰り返す

「生命の輝きってなんだよ……僕に生命の輝きなんてない
霧のせいで虎が離れた時だって、内心ほっとしたくらいなんだ
これで周りを傷付けずに済む、って……
怖い虎と僕は別の生き物だと証明された、って……」

けれど、敦の目に移る六年前の痕跡
澁澤を殺した過去、そして、澁澤に殺されかけ生き延びた過去
兇暴な爪を持つ虎は恐ろしい

「でも……虎は昔、僕の命を助けた……」

敦の前から、六年前の光景が消え、道が現れた
敦は、唇を噛み、足を前へと踏み出す
何処からか、虎の唸り声が聞こえてくる

「心臓の鼓動から逃げられないのと同じ……お前は僕の生きようとする力だから」

敦は顔を上げて、暗闇を見る
虎の咆哮が近付いてくる

「今ならお前の声がよく聞こえるよ
お前の言葉がよく判るよ」

敦は、自分の中の虎に呼び掛けて走り出す
急かすように虎が鳴く
敦の瞳に光が灯る

「ああ、判ってるさ！ 皆の命が燃えてる！」

「同じ言葉をお前に返すよ
ぼやぼやしてると置いてくぞ」

「ｰｰｰｰｰｰｰｰｰｰ来い、白虎」

求める敦の手に応えて、虎がその身を踊らせる
白い月光に猛虎が吼えた





「……っ」

澁澤を受けた芥川の鎧が黒外套に戻る
芥川の心臓を貫こうとする澁澤に、夜叉白雪が斬りかかる
澁澤は、夜叉白雪の刃をはね飛ばし、素早く芥川を蹴り上げた

芥川は、瓦礫に激突する
芥川は、全身に走る痛みで、呼吸さえまともに出来ない

隙を狙い、刃を振るった夜叉白雪もん刀が受け止められ、殴り飛ばされる
芥川と反対側にあるビルにぶつかり、瓦礫に生き埋めにされる

「君達の生命の輝き……確かに受け取った
あとは私の蒐集品として生きるがいい……」

「っ！」

澁澤は自らの爪をナイフのように変形させた
身構える鏡花に、鋭いナイフが降り下ろされようとした時

何処かから、青白い閃光が降ってきた

近付く気配に澁澤が反応する
閃光は澁澤にぶつかり轟音をあげた
衝撃波が走り、地面が抉れる
爆風にも似た強い風で、土煙が舞う
土煙がおさまった先に、鏡花が見たのは、しなやかで逞しい白い獣の姿

「『龍虎』とは、よく云ったものだ
君の存在を私に告げた露西亜人は云った
龍が異能の持つ混沌本来の姿だ、と
ならばｰｰｰｰｰ
白虎を纏う君は、すべての異能に抗うものだな」

獣の影が蒼く光り、虎から人へと姿を変えた敦が澁澤の前に立ち塞がっていた

覚悟→←異能を取り戻すのは…

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す