墓参り ページ5
近代的な高層ビルと重厚な煉瓦造りの建物
とが混在する港湾都市・ヨコハマ
そのヨコハマの街を見下ろす丘で、中島敦は何かを捜すようにあたりを見回した
階段を下りる途中で、ふと立ち止まる
見つめるのは、緑にかこまれた墓地
敦は視界の端にいる目当ての人物に近付く
砂色の長外套に、ぼさぼさの黒い篷髪、首と手に巻いた包帯が印象的な男は、墓石にもたれかかるようにして寝そべり、空を見上げていた
敦は、墓に向かって手を合わせる
「誰のお墓か判っているのかい？」
「いえ……でも太宰さんにとって大事な人なんですよね？」
墓石には、『S.ODA』の文字
「……何故そう思う？」
「太宰さんがお墓参りなんて初めて見ますから」
「これがお墓参りしてるように見えるかい？」
太宰がおどけたように敦に言った
「見えますけど……」
敦は頷いてそう答えた
太宰は敦の言葉に、無言のままゆっくりと微笑んだ
微笑ん太宰は、四年前の情景を思い出していた
朽ちた洋館の広大な舞踏室、誇りと血にまみれた記憶
「ｰｰｰｰｰｰｰ………」
太宰は、表情の消えた顔で自らの手を見詰める
「もしかして………太宰さんの好きな人だった、とか？」
「好きな女性だったら一緒に死んでるよ」
「ま、太宰さんならそうか」
敦がそう呟くと、いつの間にか立ち上がった太宰が敦の方を向いた
「なにか云った？」
「いえ、べつに……」
「……友人だ」
ポツリとこぼした太宰がゆっくりと敦の方に向かって歩く
「私がポートマフィアを辞めて探偵社に入るきっかけを作った男だよ
彼がいなければ、私は今もマフィアで人を殺していたかもね」
「えっ……」
すれ違いざまに太宰が敦にそう告げた
敦が当惑し、何かを云うよりも先に、太宰が
「嘘だよ」
冗談めかしてそう言った
「国木田君あたりに云われて私を探しに来たのだろう？」
「ええ、大事な会議があるからと」
「ｰｰｰｰパス」
「ええ？」
太宰は、背を向けたまま歩く
「ちょっと新しい自´殺法を試したくてね」
「またですか？ もう……」
ひらひらと手を振る太宰に、敦は呆れた声を出す
砂色の長外套が、ゆらりと海風に揺れる
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雪華 - ワンピース×たくっちのまぃの恋愛短編集をリクエスト来ましたよ！頑張って作って下さいね! (2018年10月8日 9時) (
レス) id: 1286db9797 (このIDを非表示/違反報告)
朱鷺の砂 - こんな作品を読んでいただき、ありがとうございます！ (2018年10月7日 22時) (レス) id: c2940fbcc7 (このIDを非表示/違反報告)
ユウナ - 初コメです！小説面白かったです！更新頑張って下さい！ (2018年10月7日 21時) (レス) id: f267fe3bd0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：朱鷺の砂 | 作成日時：2018年10月7日 18時
