ビビって帰っていい時 ページ39
「いい感じに場があったまってるじゃねぇか」
ヨコハマ上空
霧が届かないほどの高高度に滞空する機密作戦用輸送機『鴻鵠』のハッチに立つ中原
霧の立ち込めるヨコハマと、ヨコハマを喰らい尽くす程の大きな龍を照らす美しい月
だが、それらは破滅をもたらすもの
『中也君
おそらく太宰君は既に排除されています
この意味が判りますね？』
「構いやしねぇよ」
感情を押し殺す安吾の声を聞き乍、中原は自らの手袋を取る
『いいのですか？
報酬である僕の命を受け取っていませんが』
「思い上がんなよ
……六年前の手前は下っ端の潜入捜査官だ
澁澤の投入に反対しても、聞き入れられなかったんだろ？」
安吾の声を遮り、中原はすべてを諒解している響きで告げた
『……』
「これは俺の戯言だが……太宰のポンツクは、あの中にいる
間違いねぇ………
一発殴らねぇと気が済まねぇんだよ……
切るぞ」
中原の視線の先にあるのは、ヨコハマを暴れまわる巨大な龍だ
龍の中に太宰が取り込まれていることを、中原は直感で感じ取っていた
『ｰｰｰｰｰ……頼みます』
「まもなく目標到達地点です」
中原の背後に特務課のエージェント・辻村が居た
「……本当に行く気ですか？」
「ああ」
即答した中原に対し辻村は、
「無理です！」
睨み付けそう言った
眼下に見える龍は人知を超えた化け物
異能者とて人間
己の力を過信して闘えば死ぬ
辻村の言葉を中原は鼻で笑った
「そういうのはな、ビビって帰っていい理由にゃなんねぇんだよ
ビビって帰っていい時はどんな時か判るか？」
「……判りません」
「ねぇよ、そんな時」
「！」
中原は床を蹴り、空へと飛び降りた
風圧が襲う
大気が肌を斬る
「ｰｰｰｰｰ汝、陰鬱なる汚濁の許容よ、更めてわれを目覚ますことなかれ……」
中原の全身を異能痕が駆け巡る
膨大な力は、中原自身にも止めることはできない
重力で霧を払い、ビルの屋上へと降り立つと同時にビルそのものを破壊
破片は宙を舞い、中原はそれらを足場として宙を駆け上るように龍に近付いていく
「すごい……」
鴻鵠から中原を見ていた辻村が呟いた
『彼の異能力は重力操作です
ですが、自らを重力の化身とするあの「汚濁」の状態は、自分では制御も解除もできません』
通信口からの安吾の言葉に
「死ぬまで暴れ続けるってことですか！？」
辻村は血相を変える
安吾は静かに同意した
安吾も辻村も、そんな中原の姿を見守ることしかできなかった
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雪華 - ワンピース×たくっちのまぃの恋愛短編集をリクエスト来ましたよ！頑張って作って下さいね! (2018年10月8日 9時) (
レス) id: 1286db9797 (このIDを非表示/違反報告)
朱鷺の砂 - こんな作品を読んでいただき、ありがとうございます！ (2018年10月7日 22時) (レス) id: c2940fbcc7 (このIDを非表示/違反報告)
ユウナ - 初コメです！小説面白かったです！更新頑張って下さい！ (2018年10月7日 21時) (レス) id: f267fe3bd0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：朱鷺の砂 | 作成日時：2018年10月7日 18時
