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扉の先 ページ34

『だからね……これは君の為だ』

薄暗い部屋で、赤い瞳が悪魔のように妖しく光る
澁澤は、手元のスイッチを押した

少年の座る椅子に、強い電撃が流れる
絶叫
幼い悲鳴が室内を満たす
少年の四肢が痙攣し、暴れまわる
だが、手足の拘束具が少年を縛り付けて放さない
電撃は流されつづけ、過剰な電圧が紫電となって少年の体表を踊る

ろくに栄養も与えられていない十二歳の肉体には、到底受け止められない
脳神経が焼き切れる
筋肉繊維が弾け、血管が千切れる
少年の顎が揺れた

『さあ
私に驚きを与えてくれーーーーー』





敦もまた、霧の中に現れた扉を開け、その先をーーーーー石造りの部屋ーーーーー見ていた

大量の機材が置かれ、部屋の中央に伸びる幾本ものケーブル
部屋の中央には、背を向ける長髪の影と、椅子の上で暴れる子供
椅子に拘束され、電流を流され悲鳴をあげる少年を敦は知っている

その少年の正体は、六年前の敦だった

ーーーーー僕はこんな過去知らない、記憶にない

そう思いかけて、敦は首を振る

ーーーーー忘れただけ?
記憶の奥底、扉の向こうに閉じ込めていただけなんじゃないか……?
あまりにも、消し去りたい過去だから(・・・・・・・・・・・・・・・・)

敦は、ずっと忘れていた
六年前、澁澤は孤児院を訪れ、敦を部屋のひとつに閉じ込め、機器を取り付けて拘束して電流を流した
再生された記憶
敦は、記憶の中で悶え苦しむ自分の姿を見ている
やかで、幼い敦から、月のように青白く輝く結晶が浮かび上がってきた

『おお……』

澁澤は、どこか異常な笑みを浮かべていた
けれど、異変が起こった
悲鳴をあげ、苦しんでいた幼い敦が突然、声を止めた
瞳は見開かれ、獰猛な虎の眼に変化した
つづいて、細い腕が鋭い爪を持つ前脚になり、足は逞しい後ろ脚へと変わる
頑丈な拘束具は、硝子のように一瞬で弾け飛んだ
さらに、分離したはずの青白い結晶体に喰らい付き、再び取り込む
狂暴な牙が噛み合わさった

六年前の澁澤が焦り始めるが、もう遅い
幼い敦は、完全な虎に変じていた
自らを縛り付けていた椅子を薙ぎ払い、大量の機器を全て破砕する

そうして
ーーーーー虎は、白い男に爪を突き立てた

斬撃
澁澤の顔に深い爪痕が走る
皮が剥がれ、骨が削れた
白い部屋に、赤い血が舞う

「思い出した」

記憶の部屋と髑髏→←死と記憶



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雪華 - ワンピース×たくっちのまぃの恋愛短編集をリクエスト来ましたよ!頑張って作って下さいね! (2018年10月8日 9時) (レス) id: 1286db9797 (このIDを非表示/違反報告)
朱鷺の砂 - こんな作品を読んでいただき、ありがとうございます! (2018年10月7日 22時) (レス) id: c2940fbcc7 (このIDを非表示/違反報告)
ユウナ - 初コメです!小説面白かったです!更新頑張って下さい! (2018年10月7日 21時) (レス) id: f267fe3bd0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:朱鷺の砂 | 作成日時:2018年10月7日 18時

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