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四人 ページ20

遠くで鐘の鳴る音が聞こえた
青白い満月が闇夜の霧を照らす
黒い塔が、霧から突き出て月へと延びていた
不吉な塔で宴が開かれる

「太宰君」

地上を見ていた太宰に、後ろから白髪に赤い目をした男ーーーーー澁澤龍彦ーーーーーが声を掛ける

「そんなものを見ていて退屈ではないのか?」

「……退屈?」

感情の消えた顔で、太宰が問い返した

「ああ、私は退屈だよ」

そんな二人の間にある(テーブル)には、何故か赤いリンゴと髑髏が飾られている
その内、三つのリンゴには、ナイフが刺さっている
そして、四つ並べられた椅子の一つにAが座っている
Aは、二人の会話を気にも止めず、本を読んでいた

「今夜このヨコハマのすべての異能が私のものになるだろう
私の頭脳を超え、予想を覆す者は今回も現れない……実に退屈だ」

澁澤が詰まらなそうにそう言った

「私も昔、同じように退屈していたよ」

「どう乗り越えた?」

「口で云うより、やってみせたほうが早い」

太宰が悠然とした仕草で、空いた椅子の一つに座った

「ほら、現に君は今、私の真意が判らない
君に協力しているのか、利用して裏切る気なのかも」

太宰の声からは本音が読み取れない

「読めないと思っているのは君だけだ」

「やはり君には救済が必要だ」

太宰はそう言うと、そっと目を伏せた

「誰が私を救済出来ると云うのかな」

澁澤が小さく笑う

「さぁ……天使か……それとも、悪魔か」

太宰が、テーブルにある髑髏を手に取る
髑髏の頬には、斜めに走る傷がある
いつの間にか、ナイフの刺さったリンゴが四つに増えていた

「ーーーーー僕に云わせれば、お二人共、真意は筒抜けですよ
そんな嘘では戯曲は紡げない
観客も興醒めです」

楽しげに笑い、男は太宰の手から髑髏を取る

「『魔人』フョードル君……」

澁澤が和やかに四人目を迎えた

「……やっと、役者が揃った」

そこで初めて、Aは視線を上げ、そう言った

「君にも踊ってもらおう……私の協力者として」

「協力?
彼が裏切る可能性が一番高いよ」

太宰が笑みを溢す

「全くその通り」

フョードル自身が愉快げに同意し、席についた

「裏切る可能性が一番低いとしたら、彼女だろうけどね」

太宰はそう言って、Aを目に映す

「さぁ……私が裏切るかどうかを決めるのは、私自身ではなく………貴方達(・・・)だからね」

Aはそう言うと、その青い瞳に澁澤を映した

宴→←『武装』探偵社



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雪華 - ワンピース×たくっちのまぃの恋愛短編集をリクエスト来ましたよ!頑張って作って下さいね! (2018年10月8日 9時) (レス) id: 1286db9797 (このIDを非表示/違反報告)
朱鷺の砂 - こんな作品を読んでいただき、ありがとうございます! (2018年10月7日 22時) (レス) id: c2940fbcc7 (このIDを非表示/違反報告)
ユウナ - 初コメです!小説面白かったです!更新頑張って下さい! (2018年10月7日 21時) (レス) id: f267fe3bd0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:朱鷺の砂 | 作成日時:2018年10月7日 18時

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