霧 ページ14
両目を開き、がばっ、と大きく体を起こす
真っ暗な空間
社員寮の自分の部屋、その押し入れの中
「……夢、か」
呼吸は荒い
息を吐いていると、襖の外から控えめな声がかけられた
「開けていい?」
鏡花の声だ
「あ、うん……」
頷くと、押し入れの戸が開けられ、淡い光が差し込んでくる
まだ夜は開けていない
「大丈夫?」
「え?…なんで?」
「……ひどくうなされていた」
心配そうに、鏡花は目を伏せる
現在、敦と鏡花は武装探偵社の社員寮で寝食を共にしている
勿論、流石に鏡花と同じ部屋で寝るわけにはいかない
そこで敦は、押し入れで眠ることにしていた
とはいえ、所詮は押し入れ
戸は薄く、騒げば声も漏れる
何時から気付いていたのか、鏡花の背後を覗き見れば、きちんと整えられた布団が見えた
「うん、ちょっと怖い夢を見た」
「!」
敦の言葉に、鏡花が弾かれたように顔を寄せてきた
「ちょ、ちょっと!…鏡花ちゃん!?」
「……その夢に、霧は出てきた?」
「……え?」
敦の顔に緊張が走る
急かされるように押し入れを飛び出し、敦は窓を開け放つ
ーーーーー白い霧が、視界を埋め尽くしていた
霧、霧、霧
夢の中と同じように、霧が辺りに立ち込めている
何時もなら窓から見える筈のヨコハマの夜景も、霧に呑み込まれているようだった
「電話が繋がらない」
短い言葉で鏡花が伝える
敦も慌てて自分の携帯電話を確認する
「……僕のもだ」
白い霧と、繋がらない電話
異常な事態に、不穏な予想が敦の頭をよぎる
「これ、異能力者が自´殺しちゃうっていう、あの霧なのかな……」
「探偵社に行こう」
窓の外を見ていた鏡花が、敦の方を振り向いた
「え?…今?…今すぐ?
……でも、朝まで待った方がいいんじゃない?」
しかし、鏡花の表情は険しく、すでに決意した気配が漂っている
「そのうち、霧も晴れるかもしれないしーーーーー」
往生際の悪い言葉は、最後まで言うことができなかった
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雪華 - ワンピース×たくっちのまぃの恋愛短編集をリクエスト来ましたよ!頑張って作って下さいね! (2018年10月8日 9時) (レス) id: 1286db9797 (このIDを非表示/違反報告)
朱鷺の砂 - こんな作品を読んでいただき、ありがとうございます! (2018年10月7日 22時) (レス) id: c2940fbcc7 (このIDを非表示/違反報告)
ユウナ - 初コメです!小説面白かったです!更新頑張って下さい! (2018年10月7日 21時) (レス) id: f267fe3bd0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朱鷺の砂 | 作成日時:2018年10月7日 18時