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過ぎ去ったはずの過去 ページ13

『出ていけ、穀潰し!』

天に近付こうとする高い建築物
繊細な彫刻と色鮮やかなステンドグラスに彩られた、白く美しい教会

その中心で、敦は身を震わせる
恐怖にすくむ体は思うように動かない
血の気が引いた蒼い顔に、脂汗が滲む

此処が何処なのか、敦は知っている
敦の育った施設
そして、とっくに去った場所

近付く気配にハッと頭を上げると、見覚えのある人々が敦を見下ろしていた
院の職員達だ

『お前など、この孤児院にも要らぬ!』

罵倒がぶつけられ、敦は悟る
過ぎ去ったはずの過去
思いだしたくもない、孤独と屈辱と恐怖の日々

ーーーー思い出したくもない? “思い出せない„ じゃないのかーーーー?

ふと、目前の景色が歪んだ
職員達の背後に、突如として扉が現れる
荘厳で重厚な、神々しい扉
敦の目が扉に引き付けられる

開けちゃいけないーーーーー……

自分で自分に言い聞かせる言葉ばかり浮かぶ
恐怖で体がすくみ、震えが止まらない
何故なのか、敦自身にも理解不能だ
ただ本能のように、恐怖が心を荒れ狂い、枷をかける

その扉は、決して開けてはいけないーーーーー

『どこぞで野垂れ死ぬのが世間様の為よ』

『天下の何処にも、お前の居場所などありはせん』

呪縛じみた言葉が聖堂に響く
院長の声に反応したかのように、扉から、じわりと霧が滲んだ

気付けば職員達は居らず、白い霧が敦に襲い掛かってくる

「!」

霧、霧、霧
真っ白な霧で視界が埋め尽くされる
叫びたくても、叫べない
口中にまで霧が侵入し、支配されるような心地を覚える
息が苦しい、呼吸ができない、霧に喰われる
喰われて、死んでしまうーーーーー

ーーーーー目が覚めたのは、その時だった

霧→←太宰と安吾



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雪華 - ワンピース×たくっちのまぃの恋愛短編集をリクエスト来ましたよ!頑張って作って下さいね! (2018年10月8日 9時) (レス) id: 1286db9797 (このIDを非表示/違反報告)
朱鷺の砂 - こんな作品を読んでいただき、ありがとうございます! (2018年10月7日 22時) (レス) id: c2940fbcc7 (このIDを非表示/違反報告)
ユウナ - 初コメです!小説面白かったです!更新頑張って下さい! (2018年10月7日 21時) (レス) id: f267fe3bd0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:朱鷺の砂 | 作成日時:2018年10月7日 18時

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