117.愛オシイ ページ8
ご飯を食べ終えた翔さんは
いつものように縁側でタバコを吸っていた。
チリンチリン…と鳴る風鈴に
蚊取り線香の匂いが漂う縁側には
明るい月明かりが。
食器を片付けた私は
翔さんの近くに行って声を掛ける。
「もう、すっかり夏の夜空ですね。」
「んー。これからこうやって
四季折々の景色をお前と見ていくんだな。」
「…一緒に見てくれるんですか？」
「俺はお前と見たいと思ってるよ。」
「翔さん…。」
そう言って笑う翔さんの頭の上には
まるまるなお月様が。
私も縁側に座り
2人で見上げる。
「そいや…来月、
アメリカに1週間の出張が入った。」
「来月…ですか？
私もキャンプがあるんですけど
同じ時期ですかね？」
私は来月頭に一泊二日。
翔さんは私が帰ってきた次の日からだった。
その間しばらく会えないんだ…。
「さみしい？」
「え？そりゃ…さみしいですよ…。」
「はは！正直だな！」
私の返事に喜びながら
私の膝の上に頭を乗せて寝転ぶ翔さん。
って…
えええ！！！
な、なにをしてるんですか！？
急に甘えるとか…
殺す気ですか！？
「俺も…さみしい。かな？」
膝の上で目を閉じながら
そんなことをつぶやく。
心臓がきゅぅん…。と音を立てる。
ああ、愛しいな。
この人のことが愛おしい。
そう思いながら翔さんの頭を撫でていたら
あっという間に寝息が聞こえてきた。
疲れたって言って帰ってきましたからね…。
しばらくはこのまま
そっとしておこう…。
そぉっと
翔さんのおデコにキスを落とすと
「ん……。」
わずかに反応する。
「…ナオミ。」
ナオミ？
私の名前は…A…。
ナオミ…？
ナオミ…？
ナオミって誰？
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作者名：ミイチゴ
| 作成日時：2015年8月18日 22時
