140.ナオミ ページ31
それから
同じ病室にいる人たちの声が聞こえる中
そっと唇と唇が触れる。
「翔…さん？」
思わず目をバッチバチさせて
動揺してることを全面アピール。
「んー…、好きずきて我慢出来なかった。」
「しょ！しょおざん"！！！」
「ったく…どーしたもんかな？」
点滴をしている私のベッドへ
ドサッと上がり込み
狭いベッドでいつもみたいに
その腕に包まれる。
「仕事より大切なものなんて無かったのにな。
特に今回は出世が掛かってたのに…
ああ！お前ってやつは！！」
「ごめんなさい！！」
「会社から成田へ向かう車中、
ずっとお前のことが頭の中を占領してんだよ。
なんで引き止められた？
なんで泣いてたんだ？
なんで俺の気持ちを分かってもらえないんだ？
って。
向こうで一緒に仕事をするナオミの話なんて
全く何も頭に入らねぇの。」
「ナオミ…。」
「そう、今回の仕事の取引相手だよ。
シカゴの人気ポップコーンのお店の創業者。
ナオミ・ベネットってお婆ちゃん。
御歳88歳にして真っ赤な口紅つけて
甘ったるい香水振りまいて…」
ちょちょちょちょっと待て〜、
ん？
「お、お、お婆ちゃん！！！？
ナオミが、お婆ちゃん！？
アメリカ人の！？」
「なに？そうだけど。続けてい？」
顎が外れるくらい口を開けたまま
ウンウン頷いた。
え！？
これは恐ろしい勘違いな予感！！
「俺のことがお気に入りで
わざわざ日本に来たり
終いにはアメリカまで連れてかれるわ。
でもお得意様だからな、言いなりだったの！
な、の、に。だ！！」
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作者名：ミイチゴ
| 作成日時：2015年8月18日 22時
