10粒.待ってて ページ10
もう死んじゃったおばあちゃんが、私にいつも言い聞かせていた言葉。
『悪いことの後には、必ずいい事がある。』
おばあちゃん、それは本当だったよ。
しらはまさんとの一悶着があったけど。
現にこうやって、佐野くんとお話出来て、お願いまでされちゃったもん。
雑用だろうが何だろうが、精一杯頑張るよ。
この時の私は、佐野くんのお願いに浮かれ過ぎていて、この後波乱が待ち受けているなんて思いもしなかった。
玲於「じゃあ後でいろいろ、連絡事項伝えに行くから。えっと...放課後、教室で待ってて？」
A「うっ、うん！」
わーわー！
佐野くんと待ち合わせする日が来るなんて...！
佐野くんの「待ってて」、今頭の中でフル録画したよ。
はー、幸せだー。
じゃっ、後で、と教室を出ていく佐野くんの後ろ姿。
これは夢じゃなかろうか。
ぽけーっと未だ夢心地な自分のほっぺを、むぎゅぅっと引っ張る。
...いたい。
ってことは、夢じゃないんだ！
佐野くんとお話したことも、お願いごとされたことも、放課後待ち合わせしたことも全部。
A「...えへっ。」
くるみ「良かったわね、A！」
A「うん、とても。」
って、あれ！？
くるみちゃん、もしかして...。
私が、佐野くん好きなことに気付いた！？
それなら訂正する手間が省けた。
と思うと同時に、あの４人組の会話。
─『うちの友達、彼氏盗られたらしいよ。』─
何故かずっと、心の中に残ってて...。
くるみちゃんは、そんな事しないのに。
佐野くんのことを言おうとする度に、あの会話がずっと頭を過ぎってたの。
だから、今くるみちゃんの誤解が解けて良かった。
A「あっ、あのね！くるみちゃんに、応援してもらえたら嬉しいな。」
くるみ「もっちろんよ！とっくのとうに、応援してるから！」
グッと親指を突き出し、可愛くウィンク。
くるみちゃん、本当に優しいな。
私が嘘ついたことも全然怒ってないし、むしろ応援してくれてる。
くるみ「だから、昼食の時みたいに素っ気ない態度、取っちゃダメだからね。」
A「えっ、私佐野くんに素っ気なかったかな？」
やっぱり、最初の『何か用ですか。』が、マズかったかな...。
くるみ「...？何言ってんの？佐野くんじゃなくて、亜嵐くんのことよ。」
A「...へ？」
くるみ「マネージャーのお誘いOKしたの、亜嵐くんのためでしょ？」
何でマネージャーと亜嵐くんが、関係あるの...？
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作者名：いちご | 作成日時：2018年5月5日 22時
