８粒.頼みたいこと ページ8
声の方を見ると、やっぱり、と思った。
その反面、何？どうして？と、はてなマークが頭いっぱいに浮かんだ。
A「何か用ですか。」
あっ、今の絶対感じ悪かった。
「どうしたの？」とかの方が、女の子らしかったよね。
いやでも、あの時挨拶を返せなかった時点で、女の子らしさとか好感度とか、そんなの全部こぼれ落ちてしまったのだけど。
じゃあ、それなら、なぜ佐野くんがわざわざ私のところへ？
玲於「ちょっと頼みたいことがあって。」
A「頼み、たいこと...？」
玲於「うん、中村に。」
私に、ですか...？
そこでピンときた。
これはまさか...。
高校に入学してからの経験を参考にすると、これは...。
「くるみちゃんに、この手紙渡してくんない？」ってやつだ！
臆病な男子共が、今時熱心に筆を取り、淡い想いをのせたラブレター。
それをくるみちゃん本人に渡す勇気がなくて、私に代わりに渡してって言ってくるやつだ。
入学してから３度経験した仲介人。
今までは、くるみちゃんはやっぱりモテるなぁって、感嘆してたけど。
佐野くんだけは別。
えっ、私は今から、大好きな人が好きな女の子にラブレターを渡してくれ、と頼まれるのか。
や、だ...。
そんなことされたら、くるみちゃんが嫌いになってしまいそう...。
A「無理...です...。」
思わず発してしまった。
声、震えてるよ。
玲於「えっ...無理...？」
困ったなって、頭をポリポリかく佐野くん。
と言うか、こんな至近距離で、こんなに長く佐野くんとお喋りするなんて初めてで。
勝手に一喜一憂してるけど、心臓がバクバクいってて止まらないの。
玲於「頼み事の内容だけでも、聞いてくれない？」
それはつまり、くるみちゃんへのラブレター...。
玲於「ダンス部のことなんだけどさ...。」
...ダンス部？
ラブレターではなくて？
A「ダ、ダンス部...ですか...？」
玲於「そ。俺、ダンス部に入部してるんだけどさ。」
そんなの、もちろん知ってるよ。
佐野くんは小さい頃からダンス習ってて、キッズの時からたくさん賞を貰ってるって聞いた。
中学校は設備が不十分だから、ダンス部はなかったけど。
さすが私立。
この高校ではダンス部は強豪らしくて、毎年全国に行ってるんだって。
佐野くんは真っ先に、ダンス部に入部したらしい。
佐野くんのことたくさん知ってるけど、ダンスはまだ見たことないなぁ。
佐野くんの踊る姿、すっごくかっこいいんだろうなぁ。
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作者名：いちご | 作成日時：2018年5月5日 22時
