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「書けた」
目の前のたった一枚の紙切れが私たちを夫婦にした。
お互いの親に挨拶を済ませ、やっと全ての欄を書き終えた。紫耀のお母さんには土下座でもするんじゃないかってくらいに謝られて、私の両親の前ではふたりで頭を下げ続けた。
やっと、やっと、夫婦になれる。
紫耀「これで、Aが奥さんになるん？」
「うん、そうだよ。」
紫耀「あかんわ、なんか全然実感湧かん。ドキドキしてる」
「わたしも」
ふたりしてフワフワした気持ちを抱えて、何度も何度も間違えがないか確認して、大丈夫大丈夫って2人で言い合った。
ジッと婚姻届を見つめる紫耀の横顔を見ながら、この人が私の夫になるんだと思えばすごく誇らしくて、でも気恥ずかしくて、でもやっぱり嬉しかった。
紫耀「なに？そんな見て」
「ううん。かっこいいなぁと思って」
紫耀「ははっ、珍し。そんなん言うん」
「こんな人が旦那様になるなんて幸せだなぁって思ったの」
紫耀「俺やって。こんな奥さん勿体無いなぁって思うよ」
肩を寄せ合って、穏やかに流れる時間を静かに過ごした。
何も喋らなくても心地よくて、安心できて、落ち着く。
紫耀もそう思ってくれてたらいいなぁ。
紫音「ままぁー、まぁまー！」
「ふふ、起きちゃったみたい」
紫耀「パパのことは呼んでくれんのかなぁ」
「ヤキモチ妬かないの。しおーん！ママいるよ。ちょっと待ってね」
子育てをしながらだから夫婦水入らずの時間なんてほとんどないだろうな。
だけど、我先にと紫音の元にかけていく紫耀を見てたら、これでよかったとさえ思えてくる。
紫耀「しおーん、パパおるよぉ」
紫音「ぱぱぁ？ままはぁ？」
紫耀「え、パパじゃあかんの、」
「紫音。どうしたの？寂しくなっちゃった？」
紫音「んー、しーくんおっきしたらママいなかったの」
「あー、ごめんね。よし、じゃあママとパパと3人でねんねしようね」
紫音「パパも？」
「うん。」
紫音「ぱぱぁ、ぱぱこっち！」
紫耀「うん！！！」
ベッドで川の字になって、安心したように眠りだす紫音に思わず微笑んでしまう。
そんな紫音を見てたら眠くなってきたのか紫耀もウトウトしていて、そっくりな2人の寝顔をこっそり写真に収めた。
これは待ち受けだなぁ。
「おやすみ」
家族っていいなぁ。
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作者名：aoi
| 作成日時：2016年12月10日 22時
