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その日は土曜日だった。
紫耀も私も仕事は休みで、一日中紫音と遊んで、お昼寝をして、並んでご飯を食べて、絵に描いたような幸せな休日だ。
紫耀「紫音、にぃにとお話ししよっか」
紫音「んー？いいよぉ」
「紫耀、」
紫耀「うん」
今日にしようってふたりで決めた。
全てをこの子に伝えようって。
「紫音、ママね、紫音にずっと嘘ついてたことがあるの。」
紫音「んー？」
「紫音のパパは病気で天国に行ったんだよってお話ししたでしょ？」
紫音「うん」
全てを伝えるには早すぎやしないだろうか。
真実がこの子を傷付けやしないだろうか。
不安で握り締めた手を、紫耀がそっと握ってくれた。
「あのね、紫音のパパね、本当はちゃんといるの。天国なんかいってないの」
紫音「んー？」
「あのね…」
紫耀「紫音、にぃにな？ほんまは紫音のパパやねん」
紫音「ぱぱぁ？」
紫耀「そう。紫音のパパなの。」
紫音「ぱぱ？しーくんの？」
紫耀「そう。紫音のパパ」
紫音は何度も何度も確認した。その度に紫耀がそうだよって答えるの。
紫音を抱き上げて、「俺が紫音のパパだよ」って笑う紫耀が、今まで見た紫耀の中で一番かっこよく見えた。
紫音「ぱぱぁ！しーくんのぱぱ！ぱぱ！」
紫耀「なぁに？」
紫音「ぱぁぱ！」
紫耀「うん。ぱぱだよ」
無邪気に笑う子どもの姿に、大人2人は涙を堪えるのに必死。
やっぱり父親が欲しかったよね。寂しかったよね。我慢させてたよね。
ごめんね。その小さな身体に大人の都合を背負わせて。
もう我慢しなくていいからね。
紫耀「紫音、俺紫音とママと家族になってもいいかなぁ？」
紫音「いいよぉ」
紫耀「いいの？ママの旦那さんになっていい？」
紫音「うんっ！ぱぁぱ！」
ありがとう。こんなにいい子に育ってくれて。
もう涙は誤魔化せないけど、それは紫耀も同じで、ふたりで泣きながら笑いあった。その間で紫音が嬉しそうに笑ってた。
これからは家族3人で思い出作っていこうね。
パパとしたかったこと全部しようね。
紫耀「A、ありがとう。紫音を産んでくれて。ありがとう。ここまで育ててくれて」
「っ、ううんっ、こちらこそ、ありがとっ、父親になってくれて」
紫音「ママいたいのー？パパもえんえんしてるー」
紫耀「ふは、違うよ。ママもパパも嬉しくて泣いてるの。」
紫音「ふーん？」
私たち、家族になります。
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作者名：aoi
| 作成日時：2016年12月10日 22時
