7 ページ7
眠れない夜だった。
朝起きても頭はボーッとしてて、でも今までと変わらず元気な息子を見て自然と微笑んでしまう。
この子が笑ってるんだから、私も笑ってないと。
「さ、保育園行くよ!」
「はぁい!」
よかった。保育園を嫌いになったりはしてないみたいだ。
意気揚々と帽子をかぶって鞄を持つ息子に一安心。
いつも通り保育園に送り届けて、私は会社に向かう。デスクでいつものように事務仕事を行って、適当にお昼を済ませて、また仕事。
仕事が終わればお迎え、という変わらない時間だと思ってたのに
「あの子、どしたん」
会社を出て少し歩いたところで、捕まった。
独特な鼻声に大きな手。
つかまれた手首が痛い。
「ついてきてたの?」
「そりゃ、あんな慌てて行かれたら気になるやん。それより、あの子。見た感じ3歳くらいやろ?」
「親戚の子ども」
「お前のことママって呼んでた」
「 、」
振り向けばしげは思った以上に真剣な顔をしてた。
まさかついて来てるなんて、見られてるなんて思ってもいなかった。
どうしよう。どうしたら逃げられる。
「そうよ、私の子よ」
「誰の子や」
「4年前、浮気してたの。その人との間に子どもが出来た。だから別れた。それで納得?」
手首を掴むしげの力が強くなる。
それは痛いくらい。イラつきなのか悔しさなのか、何なんだろうね。
「嘘つくなや」
「ついてない」
「瓜ふたつやん」
「 っ、」
「あいつの子か」
「違う」
「違わんやろ」
「違う!!」
「じゃあなんでそんな泣きそうな顔すんねん!!」
「ち、がう、ちがうの、」
「なぁ、ちゃんと話して。4年前、何があったん。あの子は、誰の子どもなん?」
逃げられないと思った。
話しちゃいけない、そう分かってる。
けど、もう限界だと思った。
「あの人の夢を邪魔したくなかった、」
「やっぱり、」
「アイドルに子どもがいるなんてご法度でしょ?しかもまだデビューもしてないJr.に」
「それであんな別れ方したんか」
「傷付けたことは分かってる。申し訳ないと思ってる。だけど、どうしても重荷になりたくなかったの」
「そう、か、」
しげは下を向いて何も言わなかった。
いや何も言えないんだ。この問題の大きさをしげが分からないわけがない。
しげは何も気にしなくていいのに。
「忘れて。それがお互いのためよ」
だって私たちには何のつながりもないんだから。
128人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
aoi(プロフ) - チサ様 HPにも足を運んで下さってるなんて、ありがとうございます。ネタが被らないように頑張って書きたいと思います。またお時間のある際にお越し下さいませ(^_^) (2016年11月13日 13時) (レス) id: f81c6301ac (このIDを非表示/違反報告)
チサ(プロフ) - HPの方も読ませていただいてます。こちらの作品もとても面白いです!更新頑張ってください(^o^) (2016年11月9日 2時) (レス) id: 8682789ece (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - はるち様 コメントありがとうごさいます。ハッピーなシーンも書けるよう頑張ります(=^x^=)ぜひまた見に来て下さい! (2016年9月22日 22時) (レス) id: f81c6301ac (このIDを非表示/違反報告)
はるち - めっちゃ面白かったんですけど、少し切ないですね(T^T)これからも頑張れんれんo(^o^)o (2016年9月18日 22時) (レス) id: fb4b4f2984 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:aoi | 作成日時:2016年7月27日 1時