＃216．日日是好日 ページ46
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7月27日
万博記念公園 生配信ライブ 前日リハーサル
関西のグループ5組、総勢70人以上が集結。5年後の大阪万博を盛り上げる目的に加え、コロナ禍で軒並み中止となった、コンサートという私たちアイドルが一番輝く場にいる姿を、多くの人に見ていただきたい、そんな想いにより生配信ライブ開催が決定した。
この場で最年長である私たちに後輩たちの視線が自然と集まってくるのを実感して、ついにここまで来たかと胸が熱くなった。
それと同時に心配していたのは、たつの体調。この生配信ライブの構成と出演、そしてドラマ撮影が重なり、まともに休む時間もないままライブ前夜を迎えた。全員が集まれる一度きりのこの時間を一瞬たりとも無駄にしないという意思をひしひしと感じる。
『───ん。水分補給』
「………ありがと」
一人きりになったタイミングを見計らい、水を渡しながら彼の様子を窺う。随分と前から顔色は良いとは言えない状態が続いていたが、これはまた酷い。
「Aちゃんて、大変やねんな」
『どした、いきなり』
「いや、こんなんAちゃんにとったら序の口やろ」
『……まぁこればかりは、慣れでしょう。でもさすがに序の口ではないよ。……力抜けるところは抜こう』
「ん。わかってんねん、ごめん」
『ううん』
あぁ本格的に参っているなと、しゃがみ込んだたつを見遣る。
数年前から後輩のプロデュースを行っているたつとは裏腹、私は時間のあるときに歌やダンスの技術面を見る程度だった。私のスケジュールを鑑みての話であるため、両手で数えられるくらいしか行ったことがない。
後輩の教育、指導に力を入れ始めたたつは何でも先立って行動していくから、その行動力にいつも驚かされ、いつも心配させられる。
『休むことと努力してないことはイコールじゃないからね』
「……おん」
なんて、人に言えたことじゃないと思いつつも、少し説教垂れた言葉を発しながら、たつの頭にぽんと手を置く。
人は誰しも、自分の背中を見てほしい人には、弱っている姿は見せられないものなのだ。
たつが第一線を張ってプロデュースしている子たちは、今、少し離れたところで、一生懸命にリハーサルを行っている。
『すごいよ、たつは』
これ以上の言葉は要らない。全て伝わる。だから、余計なことは言わずにそっとその場を離れた。その後ボソリと呟かれた言葉は、大丈夫。聞こえていないから。
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作者名：r | 作成日時：2024年2月3日 18時
