＃202．SENA's Diary �� ページ31
*
「でも、…………あ、これ言うたらあかんかも」
『え、何よ』
「言うてええん？笑」
『いいよ、ドキュメンタリーだし笑』
「なんやそれ」
『今日は思う存分、思ったこと言ってよ』
「…………Aが一番、向いてないなって思ってた」
───掛け持ちも、アイドルも
それまでのテンポが崩れたのが僕にもわかった。シンとした空気に、入店時以降聞こえていなかったBGMが再び耳へと流れてくる。
『………すばるはとんだ爆弾発言しちゃうね』
「お前がなんでも言え言うたんやろ」
『うん。おっしゃる通りだよ』
その『おっしゃる通り』が、どの発言を指しているのか甚だ疑問に思う。直前の、渋谷さんの発言はもちろんのこととして、瀬那さんの言う爆弾発言も含まれているのだろうか。
「基本的にAって何も言えへんやん」
『そう？』
「おん。のらりくらり躱してんやろなって」
『そりゃ言えないことはそうなるね』
「その言えんことの範囲がデカいんやって」
『……すばるには結構何でも言ってきたけど』
「まぁ、聞きたくない話も聞いたけどやな」
『でしょ？』
「って、そういうとこやねん」と、瀬那さん特有の躱し方を指摘する渋谷さんは少し呆れ顔で、僕も思わず苦笑いしてしまう。
「お前、他人が苦手やん」
『また爆弾発言』
「いやほんまに。やからこそ相手を探って探って、こう…それぞれに適した……っ接し方みたいなんを探し当てんねん」
適切な言葉を探しながらも話す渋谷さんを真剣に見つめながら聞き入る瀬那さん。なんだか新鮮な構図だ。
「Aに仕事が来て、量が増えて、幅もデカなって、人間関係が広がってってなったとき、……お前はキャパって言葉を知らんから、ブワって、溢れてから自覚すんねやろ？それがほんまに嫌やった」
『うん』
「Aが共演者とスタッフの名前覚えていく度に、お前の神経擦り減らしてんねやって思ってまうのが嫌やった」
『うん』
「Aがようわからん賞もらう度、AからAらしさが無くなっていく感覚が嫌やった」
『うん』
「お前が一時期、個人仕事控える言うて声優だけ続けとったとき、Aはその場所の方が似合ってんのちゃうかって」
『うん』
「でも結局また仕事増やして、んで俺とか亮の脱退、嵐も休止するって決まって、それでも必死にアイドルやって」
『うん』
───Aにアイドルが侵食する感覚がほんま嫌やった
*
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作者名：r | 作成日時：2024年2月3日 18時
