＃178．帰国 ページ4
*
『今回だけで取材何社受けたやろ……』
JET STORMも終盤。嵐としての取材から、個別取材までぎっしりと詰められていたスケジュールがもうすぐ終わりを迎えようとしていた。
その終わりが寂しいと思うほどには、外国のファンの方々に直接会える時間を設けた甲斐があったと思う。
「帰京してからアフレコ直行だけどいけそう？」
『うん。頭痛いけど何か食べて薬飲んで、飛行機ん中でひと眠りしたら治ると思う』
「了解。無理そうだったら早めに教えて？」
『はーい』
頻繁に起こる偏頭痛にも慣れた。上手く付き合っていく方法を覚えた。そうしないとやっていけなかった。
「あ、A。アイマスク、忘れてる」
『ありがと』
シートを倒して寝る体勢に入る。柚ちゃんを含め、マネージャーさんたちも疲れているだろうに、私たち一人ひとりに寄り添ってくれるのは本当にありがたい。
そんなことを考えつつ眠りについた。
*
「4、5時間前に海外いた人とは思えねぇな」
『そう？でも他のメンバーも仕事行っとるよ』
「こわ……」
「一旦家には帰ったの？」
『帰れてないんよねぇ』
「瀬那さん投稿も全部見ました、お疲れ様です」
『……裕一郎は相変わらずだなぁ、ありがと』
「恐るべし梅ちゃん」
来年4月から2期が始まるフルーツバスケットのアフレコ現場。にぃ、孝宏さんに、裕一郎こと梅原くんと一緒になった。
『初対面の開口一番、ファンです、やからね。しかも真顔で』
「先輩方にしか言ってないんで、他の奴らにはこのこと内緒でお願いします」
『……江口くんとか西山くんも先輩なんよね？』
「まぁ一応」
「一応って……笑」
「花江くんとかにも言ってないんでしょ？」
「このことに関しては絡まれるの嫌なんで」
隠している理由はさておき、現場で一緒になった時には必ずと言っていいほど「あれ見ました」「これ聴きました」と感想を言ってくれるのにもかかわらず、それを知っている人は少ない。
「Aと絡む権利を得た、数少ない後輩やなぁ」
「光栄です」
『いや、結構たくさん関わりあるからね、皆と』
「またそれは違うベクトルというか」
「そもそもお前が名前で呼んでること自体珍しいだろ」
「そうっす」
『年下は裕一郎と自由と雄馬と良太……四人だけかも』
「Aと関わる前に悉く邪魔が入るからね」
『………』
そんな会話が繰り広げられていた。
*
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作者名：r | 作成日時：2024年2月3日 18時
