＃195．ついに到来 ページ23
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2月も中旬に入り、さらに増え続ける中国でのコロナウイルス感染者。日本でも本格的に、危機感を覚えるニュースが増え続け、メンバー、スタッフの心には暗雲が立ち込めていた中、残念な報せが届いた。
嵐、北京公演の中止決定。
誰もが肩を落とした瞬間だったと言える。休止まであと一年を切った今、世界に向けて準備し続けてきた計画が全て崩れ去った瞬間だったからだ。
そして、これから先、私たちはどうなっていくのだろうと、先の見えない現状を実感し路頭に暮れた瞬間でもあった。
つい前日、徳島での公演を終えたばかりの私は、嵐の打ち合わせの席でエイトのこれからについても考えてしまう。
新しい体制となり、47都道府県ツアーを完走させようと走り出した矢先の出来事だ。まだ半分以上の公演が残っている。
「このままじゃ、国立もどうなるか」
「延期を視野に入れてるところ」
「アメリカは？」
「この感じじゃあ、ねぇ」
口々に発する言葉の多くは、ネガティブなものだった。そうなるのも仕方がない。だって、明日が未知なのだから。
「ひとまず、日本でも感染者が確認されてるみたいだから、体調管理はきちんとすること。今できることは最大限していかないと」
社会人たるもの、体調管理は仕事のうち。
そんな言葉を嫌ほど聞いてきた。それでも風邪を引く時は引くし、万全な対策なんて限界がある。そして、特に体が弱い人にとってはどれほど理不尽な言葉だろう。
でも、今だけは。
『絶対体調崩せないよね』
嵐もエイトも、どちらもファンの人たちのことを考えると、今体調を崩して心配させることも、迷惑をかけることも絶対に避けたい。
それだけではなく、自分自身、感染してしまうとどうなるのかということすら分からない今、何とも言えない恐怖感に襲われる。
そして、自分が感染して周りにいる人たちに移してしまうなんてことは、皆が皆、恐れていることだろう。
「───WHO、世界保健機関は、………」
打ち合わせから帰宅し、テレビをつけると深夜のニュースに出演しているアナウンサーの声がシンとした家に響いて、思わず音量を下げる。
『どうするかなぁ、これから……』
一人暮らし歴が長いと独り言が多くなる。これは、私の経験談で単なる私の話なので異論は認めない。なんの恥ずかしげもなく、私しかいない部屋の中で呟いた言葉は、冷えた空気に溶け落ちてしまった。
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作者名：r | 作成日時：2024年2月3日 18時
