＃190．忍び寄る影 ページ18
*
年が明け、実家に帰る暇も最早仕事始めの概念もないまま正月から仕事に明け暮れていた。私が仕事をできるということは、周りのスタッフさんたちも同じく正月早々仕事に駆り出されているわけで……。
年始の挨拶と差し入れなりなんなりして、皆で士気を高め合いながら労働の毎日を乗り切り、早くも一月の半ばが過ぎた頃だった。
『….…え。日本でも感染確認されたの？』
「何の話や？」
『新型ウイルスやって』
「あぁ、今海外でニュースになっとるやつか」
『そうそう』
「怖いよな、未知のウイルスって響きだけでなんか嫌や」
『怖いよねぇ、早く収まってくれるといいね』
この時は、まさかこの先があんなことになるなんて思ってもいなかった。両グループともに、「さぁ今からフルスロットルだ」というときだった。思いもしていなかったし、思いたくもなかった未来。
まだ他人事でいられたのは、この時期までの話だった。
*
嵐 in LA
一月末、またも私たち嵐はアメリカ・ロサンゼルスへと来ていた。歌収録の合間に、二手に分かれて行動。私は和とまぁくんと共にYouTube撮影、MV撮影を行い、翔くん、さとくん、潤くんはTikTok撮影をしていたらしい(あとで見た動画は楽しそうだった)。
「このシーンいる？笑」
『ただスクーターするっていう笑』
「使われんのかなぁ？笑」
スイーツ部(私と和は入っていない)の撮影や、レストランでの食事風景(注文などはすべて私が通訳した)の撮影、どのようにして辿り着いたのか、スクーターに乗っている三人の姿を撮るという斬新なカットなんかも……。
『こんな頻繁に海外来ることも最近じゃなかったよね』
「そうだね、結構挑戦してる感じする」
「………」
撮影の合間、移動中に何気なくそんな話をする。時間がない中、短時間でもと海外で撮影することは、側から見たら時間の無駄だと思われるかもしれない。
移動だけでも相当な時間を食う。往復となれば倍だ。その時間分、他のことに有効に使えることが出来れば。そんなことを思わないこともなかった。
それでも。
それでも、先を行く。挑戦をする。
休止まで時間のない中、……時間がないからこそ、少しでも多くの人たちへ嵐を知ってもらい、大きな舞台で恩返しをしたい。
その想いはメンバー全員、そして関係者、スタッフ全員の胸にある。
そして、それが私たちの原動力になっている。
*
＃191．さんじゅうろく→←Twitter in January 2020
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 158人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：r | 作成日時：2024年2月3日 18時
