＃85．頭と心の乖離 ページ45
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『……逆に嫌じゃないと思う？これだけずっと一緒にやってきて、それがこれからも続くと思って、みんなで高みを目指して頑張っていくと思って、今までそれぞれ活動してきたと思ったら、一人違う道を歩みたいって……そう言われて嫌じゃない人おる？』
また時が止まった。すばるに集められた私たち年長組は、これまでにも喋らず、口を開かず、その場がシンとすることはあったけれど、それが空気の重さを感じさせることは今までになかった。
なぜこんなにも不幸というものは続くのだろうか。かと言って、不幸の始まりはいつだったかなんて、考えられない。
『でもさ、渋谷すばるの人生、こんなでっかいのを私たちとファンの方々で縛り上げるだなんて、できんのよ』
『すばるやって、自分の人生を自分のために投げ打つって決めてるからこうして話してくれたんやろうし、どれだけ辛くても、どれだけしんどくても、どれだけ批判されても、私はすばるが思う道を進んでほしいと思った』
『私は何よりもすばるを優先したいと思った』
これが私の頭の中の全てだった。これを聞いて、みんながそれぞれに何を思ったのかはわからないけど、私が言えることはこれだけだった。
ファンの方々には本当に申し訳ないけど、私は私の手の届く範囲の人しか支えられないのが現状で、その範囲内にいる人を零さないように、そっと包むことしかできないのが現実だ。
「A、ごめんな、ありがとう」
もう何にも変えられない意志。
そんなものが私にあれば、と最近考えるようになった。私もこうして人を揺るがすような、それほどの威力がある意志を誰かにぶつけてみたかった。
でないと、重なる思いや出来事に潰されそうになる。
私は何か悪いことでもしたのだろうか。これほど頑張ってきて、努力して。それでも報われないことなんて散々経験してきた。だけど、それでも助けられながら、支えられながらここまでやってきた。その自負はある。
なのに、この結末。
人には人の生き方があって、私が関わりのある人数分みんなそれぞれにあって。私が関わりのない人にも存在して。そんなことわかっている。頭でわかっているから私はすばるを応援すると言ったし、人生を縛りたくないという思いが生まれた。
頭ではわかっている。けど心が追いつかない。口に出してみんなにはあんなこと言ったけれど、心は散らかったままだった。
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作者名：r | 作成日時：2023年4月29日 20時
