＃84．再来 ページ44
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「関ジャニ∞を辞めたいと思ってる」
2018年2月中旬。まだまだ厳しい寒さが続く中、渋谷すばるから発された言葉に、やっぱりな、と思ってしまったのは、この中で私だけだろう。
「なんでや」という信ちゃんを皮切りに、集められた年長組はすばるへ抗議と疑問の言葉を投げかける中、幸か不幸かすばるに集められた時点で察していた私は何も言葉を発することができなかった。
また、この時間がやってきた。
また、同じ言葉を聞いてしまった。
またかと、そう思わざるを得ないほどに去年……2017年6月の嵐の状況とリンクしていて、恐怖を感じた。そして妙に頭だけは冴えていた。
「人生残り半分って考えたとき、海外で音楽を学んで、自分の音楽というものを追求していきたいと思った」
違うのは理由だけだった。
解放されたいさとくん、音楽を追求したいすばる。理由は違えど、その行き着く先が〈やめる〉ということに直結するものなのだなと、一人だけ場違いなことを考えてしまう。
「嫌や、そんなん。日本でできひんの？それは」
「まって、話についていかれへんのやけど」
口々に話す様子を見て思う。それぞれが、それぞれに思うところがある。そりゃあこれだけずっと一緒に活動してきた仲間が、一人違う道を歩みたいなんて言われたら戸惑うのも無理はない。
けど、すばるの目が、あのときのさとくんと同じ目をしていた。意志は揺るがない、と言っている目。
なんにせよ、すばるが周りに説得されたからってすぐに考えを変えるような人間でないことは百も承知である。それはみんながわかっている。でも僅かな希望に賭けたい。そんなみんなの想いをひしひしと感じた。
『……もう、決めたことなんやろう？』
「うん」
『私はすばるの人生を縛ることはできない』
やっと開いた口が、やっと話した言葉が、すばるを全面的に肯定するものであったことにメンバーは驚いた表情を見せた。時が止まったような気がするほどに。
「何言ってるん？Aは嫌じゃないん？」
「なんでそんなすぐに受け止められるん？」
「前もって聞いてたんか？」
『聞いてないよ。今初めて聞いた』
じゃあなんで？そう聞かれても困る。今日は気持ち悪いほどに頭が冴えてるから、なんて言っても納得はしてくれないでしょう？嵐のときと同じ状況だったから、なんて言えるわけがないでしょう？
一人の人生を縛り続けることはどれほど酷なことか。
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作者名：r | 作成日時：2023年4月29日 20時
