＃71．until back ページ30
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「だって、Jr.の頃から役者やって声優やって曲も作って。ちゃんと大学まで行って。ずっとすげぇなぁAはって思ってたもん。そんな奴と同じグループでいられる俺って、最高に恵まれてんだなってそう考えてた」
ただの過大評価ではなく、嵐としてずっと近くで見守ってくれていた彼に言われたことが嬉しさを増幅させた。デビューする前から、ずっと私の中で憧れとしていたさとくんにそう思ってもらえていたことが、それこそ何より私の誇りに思えた。
『私は……、私は、この業界に身を置くことが苦ではなかったし、多分一般的な社会人生活は送れんだろうなってどこか諦めてた部分があって。やから頑張れた部分もあった』
『でも、さとくんは、いつからかは分からんけど、もしかしたらずっとなのかもしれんけど、アイドルに縛られてたんやない？』
『それを分かっていながら今まで見て見ぬふりをして、さとくんに甘えてきた』
嵐のリーダーは大野智しかいない。それがどれほど重いものなのか、リーダーをしていない私には計り知れない。リーダーにしかわからない。
彼にそんな重荷を背負わせ、おそらく今まで何度もよぎったであろう「やめたい」という四文字を言わせず、二十年近く気付いていないふりをしてきた。
紛れもなく、それが私の罪。
『さとくん、私は嵐を解体するのもひとつだと思ってる』
ずっと考えてきた。彼に想いを打ち明けてもらってから何度も何度も自問を繰り返した。私はどうしたいのか。どうするべきなのかと。その結論が、これだった。
『活動休止の案が出てきたけど、個人的にはこれ以上さとくんの重荷になりたくない。やけんって、さとくん無しでは嵐は続かない。だったら、解体することが一番綺麗な終い方なのかなって』
もしかしたら、この言葉自体がさとくんの重荷になるかもしれない。少なくとも、解放されたいという想いを一番初めに伝えてくれた彼には、その言葉の責任がついて回ってしまうから。解体するとなったとき、ファンの方々に関することを除けば、私の中の懸念点の一番はそこだった。
『休止やと、私たちメンバーもファンの方々も、どうしても嵐のリーダー大野智を待ち構えてしまう。少しの期待を残してしまう。それを背負って、さとくんは苦しくない？』
さとくんからの答えはなかった。
でもそれでいい。今はじっくり考えて、何が自分たちの最適解なのかを導き出さなければならないのだから。
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作者名：r | 作成日時：2023年4月29日 20時
