＃39．楽屋 ページ44
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横山「なぁA、ヤスのこと知ってたんか？」
2月中旬、まだまだ冬真っ只中の昼下がり。収録前の楽屋がそんな外の空気よりも寒く感じられたその一言は、最後にやってきたたつを待っていたかのように最年長から放たれた。
『……うん、知っとったよ』
横山「いつから？」
『お正月。福岡エイタメ初日の夜から』
村上「………なんで言ってくれんかったん？」
『本人の意向』
横山「言わんといてくれってか？」
『そう』
村上「じゃあAはなんで知ってんねや」
『……無理やり聞き出した』
村上「ヤスにか？」
『うん』
渋谷「………なんでわかったん」
『12月からずっと様子おかしかったから』
渋谷「なんで俺らに言わんかってん」
『やけん、本人の意向やって言って…』
横山「俺らの気持ちは考えたんか！そのまま、俺ら何も知らんままヤスが……もしかしたらおらんようになってたとか、そんなん」
『………』
錦戸「それは思った。幾ら本人が…って言っても、感情抜きにしても仕事面とか色々あるやろ、共有しとかなあかんことは」
村上「そこの分別は付けとかなあかんのちゃうん」
大倉「なぁAちゃんもなんか言ってや……」
『………聞き出したんが私じゃなくて、みんななら、……言えたんかなぁ？……私は言えんかった。言わんといてって言われて、わかった言わんよって伝えて。でも実際問題、これは共有するべきことではある。それを頭でわかってても、章ちゃんの泣きそうな顔が頭にチラついて何も言えんかった。やから、』
丸山「Aちゃん、もうええから、涙拭き？」
マルちゃんに言われて初めて自分が泣いているということに気がついた。まだメイク前で良かったと少しだけ残っていた平常心で考える。
『わかっとる。みんなの気持ちも。でも今は章ちゃんの気持ちを第一に考えたい。一番苦しいんは章ちゃんやし、それに……多分一番みんなに言いたかったんも章ちゃんやと思う』
笑い声が聞こえない楽屋は珍しかった。メイクさんに呼ばれて逃げるように出て行った私を、みんながどんな目で見ていたかなんて知りたくなかった。
それでも、みんながどんな意見を持っていようと、それぞれの根底にあるのは章ちゃんを強く想う気持ちなのは変わらない。その気持ちが何も言えなかった私への批判と化しても、実際に批判を受けても、あぁエイトで良かったという安堵感を覚える。
私はそれほどにエイトが愛おしいのだ。
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作者名：r | 作成日時：2023年9月26日 18時
