08.メイド・イン・ジャパン ページ8
「その前に。えーと、それって、私をハウスキーパーとして雇いたいってことですか？」
「しかも住み込み。」
なっ！
それってここに住むってこと！？
さっき会ったばっかの見ず知らずの殿方と！？
「ちょっと、ちょっと待ってください！
急な話に頭が回らない。」
「もちろん給料も払うからお金が溜まったら出て行けばいいよ。」
あうっ…！
なんって、なんって、なんて条件のいい話っ！
「ち、ちなみにお仕事内容は？」
訊いちゃった！
がっついちゃった！
「お部屋の掃除、洗濯、食事の用意。
あとは時間の管理をしっかりしてもらいたい。
俺さ、分刻みで1日のスケジュールを管理してるから。」
「なんか…それって……。」
「そう。ハウスキーパーと言うより
俺の面倒をみるメイドさん。
なんて。」
メ、メ、メイド！？
さすがはメイド喫茶の国、JAPAN！
メイド・イン・ジャパン！！
って、ちがぁーーう！
ちょっと話が怪しくなってる！
これは断らなければ！
「あ、あと英会話のレッスンもよろしく。」
「よろしくって、まだ引き受けたつもりないですけど！」
「じゃあ、ここ東京の寒い空の下。
雨に打たれながら寝るの？
あ、あのチラシのお店で働くとか？」
「うっ…！」
「キミに選択肢なんてないと思うけど。」
眉毛を下げてふふっ、と笑う。
悪い顔。
でも、確かに。
私には選択肢なんて、ない。
信じてた人に何もかも奪われて
何も残っていない。
失うモノなんて何もないんだから。
この人が悪い人だろうが何だろうが
手を差し伸べてくれてるんだから
この手を伸ばすべきだ。
「ホームレスの理由…簡単に、で、いいですか？」
「…いいよ。深い理由は聞かない。」
「では。
親友だと思っていた子に日本で起業したいから手伝ってと頼まれ、裏切られ、婚約者と全財産とを持ち逃げされました。
これが私が日本にきてお金が底尽きていた理由です。」
「……。」
簡単に説明した。
簡単にしたつもりなのに、思い出したら目の奥がぐっと熱くなってきてバレないようにと必死に堪えた。
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作者名：ミイチゴ
| 作成日時：2017年11月27日 18時
