06.オイシイ話 ページ6
タクシーの中の彼は全く口を開くことなく
この狭い空間には忙しなく動くワイパー音と雨音だけが聞こえる。
タクシーで移動中、降っていた雨が本降りになってきたから間一髪救われたみたい。
いや！
でも！
このままだとギブアンドテイクの関係が成立しちゃう。
どうする？
逃げる？
この大雨の中？
見知らぬ土地で？
無一文で？
「到着です。」
ああああっ！
着いちゃったよ！
どうする？
逃げる？
逃げる、A！？
……って、ん！？
「…ここが？
あなたのお家…？」
「そう。なかなか立派でしょ？」
立派なんて、そんなもんじゃない。
土地勘がないから地名は分からないけど
きっとここは東京の中でも相当な一等地だろう。
立派なタワーマンションがそびえ立つ中
一際大きなタワーマンションが目の前に立ちはだかる。
腰が抜けそうなくらいの超超高級マンション。
どうやらここが彼の住処らしい。
ホテルのロビーの様なエントランスにはコンシェルジュと思われる女性が2人もいて彼に頭を下げた。
す、すごい…非日常の世界がここに。
彼はそのまま颯爽とコンシェルジュの前を通過するから代わりに私がへこへこ頭を下げると「いいから！」って小声で注意してまた私の手を引いた。
そのまま6台もあるエレベーターの１つに乗り込むと32階のボタンを押した。
ちなみに32階が1番上のボタンだから最上階っぽい。
ひえぇ…これは、筋金入りの金持ちだ。
「で、無一文で日本に来た理由をお聞かせ願おうか。」
色々腰を抜かしてたらぶっきらぼうに彼が口火をきった。
「最初から無一文じゃないです！
それなりに蓄えがあって来ました！」
「じゃあ質問を変えよう。
なんで日本に来ていきなりホームレスしてたの？」
「ホームレスって言い方…！」
「違った？」
「あ、合ってまーす。」
「で、なんで？」
「バカにしません？」
「聞いてから考える。」
「それなら言いません！」
「それならこの取引は無しね？」
「取引？」
「ウチで働く代わりに無一文ホームレスのキミに食事と寝床を与える、って取引。」
な、なんですとっっ！？
そんなオイシイ話が転がってきてたの！？
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2911人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ミイチゴ
| 作成日時：2017年11月27日 18時
