ストロベリー・ディスコ (ページ32)

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32.お喋りじゃないと証明してよページ32

「今日は別々に出勤なんですね。」

「うん。」

朝食後、すぐにノニさんだけ出ていって残された櫻井さんはゆっくり食後のコーヒーを飲んでいる。

今日は薄い青系のチェックシャツにネイビーのネクタイ。

爽やかサラリーマンの朝って感じ。
絵になる。
キッチンのシンクを洗いながらコソコソ見ている私は市原悦子。
そう、家政婦は見てるんですよ。

「あ。そうだ。」

新聞をパサッとダイニングテーブルに置いて何か思い出したように部屋を出ていって、すぐに戻ってきた櫻井さんの手には何やらコードみたいな物が。

「何ですか？これ？」

「変圧器。
これ使いなよ。
ケータイの充電切れてるんでしょ？」

「えっ！？
いいんですか！？」

「海外に行く時くらいしか使わないから。」

はいって渡される。

うわわ、どうしよう。
すごく助かる。

「あー、その代わり。
充電復活するなら電話番号教えてよ。」

「もちろんです！
私の番号なんていくらでも差し上げます！」

「番号の大安売りー。笑」

「あ！もしかして…櫻井さんの番号も教えて頂ける、とか…？」

「いいけど、お喋りじゃないって証明してよ？」

「どういう…？」

私の問いかけに被せるように
すっ、と出されたQRコードの画面。

変圧器で充電をしながら数日ぶりに復活したスマホで櫻井さんの番号の読み込んだ。

「ピンチな時はいつでも連絡くれていいから。」

「いえ。こちらからは必要最低限しか連絡しませんので、ご安心を。」

「あー…そう？」

「お喋りじゃないって証明してみせますよ！」

「…あ、そういう事じゃなくて…」

櫻井さんが苦笑いした
その時だった。

～♪

鳴ったのは復活したばかりの私のスマホ。

画面に映し出されているのは
Kevinの文字。

キャサリンと一緒に逃げた私の元婚約者の名前だ。