ストロベリー・ディスコ (ページ3)

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03.Don't wanna cry ページ3

見上げるように見た彼は

ダークグレーのスーツに身を包み
黒い大きな傘を差して慌てて私に近寄った。

「やっべ…、すいません！
大丈夫です…か…、な訳ないですね。」

地べたで泥まみれになってる私に手を差し出そうとするから今度は私が慌ててこの身を引く。

その高価そうなスーツを汚してもクリーニング代とか払えないし。

何より、
こんな姿、あんまり見られたくない。

「だ、大丈夫です！
あはっ、ご迷惑お掛けしました！」

「いや、でも…。
あ、良かったらコレ使ってよ。」

ポケットからハンカチを出してくれる。

ふわり漂ってきた洗剤の香りが、
見知らぬ土地で触れた見知らぬこの人が、

優しくて。

「…本当に大丈夫？」

気づけばその場で涙腺は崩壊してた。

「うっ…うぅ…ありがと…、
ありがとうございます…っ！」

こんな泣かれたら迷惑だって分かっているのに、どうにも止めれなくて。

必死に落ち着こうとしている間、
彼は黙って私のぶち撒けた小銭を集めてくれていた。

それから最後にあのチラシも。

「…あ。」

「……。」

「ちがっ…！
違うんです！たまたま拾って見てただけで…、」

やだやだ！
勘違いされる！

慌ててチラシを取り上げると
恥ずかしさで余計に泣けてきて

「うっ…！
うう…っっ！！！」

超絶めんどくさい女になってた。