15.家政婦のイチゴ ページ15
日本の流行りについていけてない私。
大丈夫なのかな？
会話すら不安。
「とりあえず改めて自己紹介しようか？」
私の一抹の不安なんてつゆ知らず。
櫻井さんはプシュッとプルタブを開けてビールをゴクッと一口大きく飲んだ。
「えー、じゃあまず、俺。
櫻井翔35歳。
趣味は…旅行かな？」
「ふはっ、入学式の自己紹介か！？」
「えー？あと何を言えばいい？」
「仕事、とかじゃない？」
「職業は旅人です。」
ドヤ顔で言い切る。
でもそこははぐらかすんだ。
まあ、あんまり訊かないでおこう…。
それより櫻井さん35歳とかバケモノかな？
思ってたよりはるかに歳上だった。
「以上！
じゃあ次ニノどうぞ。」
「へーい。
二宮和也34歳。
しがない金持ちやってます。
終わり。」
わー。
紹介のクセがすごい。
そしてやっぱり職業に関してははぐらかす。
謎多きイケメン2人。
これが私の同居人…
「で？」
「アナタは？」
次は私の番となって
2人から視線が集まる。
「私は…」
親もいない。
親友もいない。
お金もない。
住む場所もない。
「
歳は28です。
精一杯頑張りますので…
よろしくお願いします！」
何にもない。
こんな私を拾ってくれた。
命の恩人。
この2人が何者だろうと
全力でご奉仕するのみ。
覚悟を決めて挨拶をした私に櫻井さんがビールの缶を差し出し、
「一郷…Aさん、ね。
じゃあこれからよろしくお願いします。」
自分の飲んでいた缶をコツンと当てた。
「しっかり頼みますよ。
家政婦のイチゴさん。」
ニノさんもゴンとぶつける。
「は、はい！よろしくお願いします！」
「俺は家主、
ニノは居候、
Aさんはハウスキーパー。
恋愛に懲りた3人、家内恋愛禁止で仲良くやろう。」
"恋愛に懲りた3人"
聞き逃さなかった、
'"2人"じゃなくて"3人"というフレーズ。
櫻井さんのあの指輪はそういうことか……。
「じゃ、かんぱーい。」
今度は3人で缶をぶつけてビールを一口飲むと
フルーティで少し苦い。
でも、美味しい。
こうして新しい生活が始まりを告げた。
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作者名：ミイチゴ
| 作成日時：2017年11月27日 18時
